20面体の作り方の検討

正20面体の作り方を検討して楽しむ



 正20面体を作るいくつかの方法と特徴を検討し、内包される黄金比、五芒星、黄金長方形などの正20面体の特徴を楽しんでみました。正20面体は、骨格だけ(スケルトン式)で表現したものと、面で表現したものがありますが、両方検討しました。
 スケルトン式では、初めに3角形を作ると位置決めがしやすくゆがみが少なく比較的正確な正20面体ができました。
 ゴムひもとストローで作るスケルトン式正20面体は形状記憶機能をもった優れものです。正20面体のほかに、3角形を基本とする他の多面体のステレオ視も楽しんで下さい。

Contents

1. はじめに
2. ゴムひもとストローで作る正20面体
3. 紙で作る正20面体
4. 綿棒で作る正20面体
5. 爪楊枝で作る正20面体
6. 正3角形から作る他の多面体
7. 多面体写真を立体視して楽しむ
8. おわりに
9. (付録)Visitor作品



1. はじめに


 黄金比は、西欧で古代ギリシャ時代から美の根底をなすものとされ、建築、彫刻、工芸に広く使われてきました。金閣寺や葛飾北斎の「宮森三十六景・神奈川沖浪裏」の構図にも表れていることが知られています。

 黄金比でできている正20面体(icosahedron)も多くの興味を引いています。これに関する多くの本が出版されWebサイトにも数多く現れています。作り方に関するWebサイトも数多くあります。筆者は、これらを参考にして、数種類の作り方を試してみました。出来上がったものが、あまりゆがんでいると、がっかりしますし、検討しにくくなります。どの方法が、ゆがみができにくいかということと作りやすいかについて検討してみました。

 もちろん、工作機械や金型を使えば、ミクロン単位の精度は出ることはわかっていますが、そこまでの精度を目的とせずに、普通の机の上で手作りで作ることを主眼としています。

 正20面体は、骨格だけ(スケルトン式)で表現したものと、面で表現したものがありますが、両方検討しました。

2.ゴムひもとストローで作る正20面体


 これは、末尾に記載の文献[1]に、作り方が詳しくわかりやすく説明してあります。その説明に沿って作ってみました。Fig.1は用意した材料でストローと細いゴムひもです。ストローは切断して長さ3cmに揃えてあります。




Fig.1 製作材料のストローとゴムひも

 Fig.2は、ゴムひもをいくつかのストローに通したところです。



Fig.2 製作過程

 Fig.3も製作過程を示しています。一筆書きのようにゴムひもを通していきます。



Fig.3 製作過程

 Fig.4は完成したストローとゴムひもによる20面体を示しています。



Fig.4 完成したストローとゴムひもによる正20面体

感想:
 この方法は思った以上に根気がいりました。ストローは直角(長さ方向に対し直角という意味)に切断することと、ゴムひもをストローに通すとき、ゴムひもの引っ張り具合をできるだけ同じにすることがコツのようで、それにより比較的ゆがみの少ない正20面体ができます。

 出来上がってしまってからゆがみを直すことは至難の業、というより不可能でした。この正20面体の特徴は、手で押さえるとフニャッとつぶれ、手を離すと復元することです。 形状記憶20面体としては秀逸の方法でしょう。

3. 紙で作る20面体


 紙で作る20面体の展開図(型紙)は、Fig.5に示すようになります。一つ一つの三角形は全て正三角形です。この展開図は、いろんなサイト[2]からダウンロードできますので、それを印刷して使うという方法もありますが、大きさがプリンタの大きさに限定されてしまいますので、画用紙に作図して作る方法が任意の大きさにできてよいと思います。赤い線に沿って切り込みをいれます。pと記した三角形は糊しろになります。




Fig.5  20面体の展開図(型紙)。
赤い線に沿って切り込みをいれる。三角形pは糊しろです。

 Fig.6は製作過程を示しています。



Fig.6 製作過程

 Fig.7は製作過程の最終段階です。両面テープで貼り付けました。両面テープを隙間に挿入するときは、ピンセットを使うと作業しやすくなります。



Fig.7 製作過程

 Fig.8は、完成した状態を示しています。



Fig.8 完成した型紙による正20面体

あそびの工作:

 Fig.5は3行でできていますが、これに2行追加してFig.9のように5行にしてみました。



Fig.9.  Fig.5の型紙に2行追加した型紙

 Fig.10は、これを完成した状態を示しています。



Fig.10.  Fig9の型紙から完成した多面体


感想:
 上記の紙でつくる方法は、作図・折り・貼り付けが正確でありさえすれば、ゆがみは殆どなく、かなり正確にできます。貼り付けるのには両面セロテープがよいとおもいます。適切な長さに切り取ったセロテープをピンセットで挟み、たとえばFigs.6-7に見えている隙間に差し込み押さえつけ、テープ保護シート部分を、ピンセットではがしてやれば上手く貼れます。

 遊びの工作Fig.10は、さらに行を追加しさえすれば、さらに長くすることができます。Fig.10の胴体部分は筒を形成していますが、円筒の状態の筒より強度があります。

4. 綿棒で作る正20面体


 20面体を綿棒で作る方法も数多く報告されています。この方法で作るとどんなことになるか調べるため作って検討してみました。Fig.11は使用した綿棒で、どこもカットすることなく、このままの形で使いました。



Fig.11 正20面体を作るために使用した綿棒

 Fig.12は、完成した状態を示しています。綿の部分を接着してありますが、接着にはグルーガンを使いました。



Fig.12 綿棒で作った正20面体


感想:
 上記の綿棒でつくる方法は、ゆがみの無いように作ることが案外難しいことがわかりました。綿棒の長さを一辺とする正5角形を紙に描き、その上に綿棒を乗せて接着する方法は、良い方法ですが、それでも組み進めるにつれ角度案内がなくなり角度を決めるのが難しく、完成した正20面体はゆがんでいることが多く、修正は不可能でした。

 Fig.12はゆがみが目だたない位置から撮影しただけで、実際はゆがみが大きい状態です。こうなると正20面体とよびにくいため単に20面体という方が良いでしょう。もちろん、角度をばっちり決める治具(ガイド)を作って接着すれば、正確にできるでしょうが、ふつうそこまでやらないでしょう。

5. 爪楊枝(つまようじ)で作る正20面体


 爪楊枝を3cmの長さに切りFig.13のような正3角形を作ります。あらかじめ紙の上に対応する正3角形を描いておき、これに合わせて爪楊枝をグルーガンで接着して正3角形を作りました。




Fig.13 爪楊枝で作った3角形


 つぎに、この正3角形でFig.14のような形に接着します。



Fig.14 爪楊枝で作った正20面体の一部(正20面体の1頂点とそれが張る5角形部分)


 Fig.15のようにFig.14とおなじものを2個作ります。



Fig.15.  Fig.14と同じもの2個の製作


 つぎに、初めにFig.16(a)を作りますが、この作業は湯のみ茶碗の上、あるいは塩ビパイプを切るか紙で作った適当な大きさの筒の上にFig.14を天地ひっくり返して乗せて行うとやり易くなります。



Fig.16 爪楊枝で作る正20面体の途中過程


 Fig.16の(a)と(b)を接合すれば、Fig.17のように完成します。



Fig.17 爪楊枝で作った正20面体


 Fig.17の手前の頂点とその真後ろにある頂点を合致するようにして撮った写真がFig.18です。



Fig.18 爪楊枝で作った正20面体。
手前の頂点とうしろの頂点をカメラの光軸が一直線に貫くようにして撮影。


感想:
 上記の爪楊枝でつくる方法は、初めに正3角形を作ってしまう方法をとりました。ゆがみはかなり小さくすることができます。また、このように棒でつくると紙で作ったものと比べ、透けてみえますので、構造が把握しやすくなります。構造を学ぶのには良い方法でしょう。

 Figs.17-18の正20面体を手の中で回してあらゆる角度から観察しますと、Fig.14に表れている正5角形が、正20面体のどの頂点から観察しても、同様に存在することがわかります。正5角形の対角線には、多くの黄金比が存在していますし、他の黄金比も内蔵されています。だから、正20面体は黄金比の権化といっても良いでしょう。

6. 正3角形から作る他の多面体


 上記のように、初めに正3角形を作ってしまうと、ゆがみが小さくなることから、この方法でFig.19のような他の多角形を作ってみました。



Fig.19 正3角形から作る他の多面体


7. 多面体写真を立体視して楽しむ


 上述のように、ゴムひもとストローで作った正20面体は、つぶしても元に戻る特徴がありますので、Fig.20に示すように、他の正20面体の中に入れるという遊びをしてみました。これは立体視した方がよいと思います。以下、立体視をして楽しんでください。

 立体視するには、平行法と交差法がありますが[3]、ここでは交差法を使います。パソコン画面と眼の間の距離は見える範囲で大きく(たとえば40-100cm)離してみた方が目が疲れません。このとき、下記のペアで左右に並んだ二つの画像がデイスプレイの画面ほぼ一杯に表示しておきます。

交差法のやり方:
 1.デイスプレイ上の画像と眼の中間付近に指を1本立てる。
 2.指先を見る。つまり、より眼になる。
 3.視線は、より目になったままに保っていると、左右の画像がよってきて重なり、指は2本にみえる。
 4.そのとき指をすっと抜く。
 5.うまくいくと像が3つ並び、真ん中に立体画像が見える。

慣れると指がなくても可能です。

 立体視は、長く見つめていると眼がつかれますので、短い時間でやめた方がよいです。



Fig.20 正20面体 in 正20面体


 Fig.20の立体視はできましたか?。ついでに下記の写真も立体視してみてください。



Fig.21 爪楊枝による正20面体




Fig.22 長い多面体




Fig.23 紙による正20面体


 以上の立体写真は,、自作した立体撮影アクセサリを使って撮影しました。

8. おわりに


 以上、さまざまな作り方を実際に経験してみましたが、その結果を考察しておきます。

 出来上がった正20面体がゆがんでいると気持ち悪いものです。修正しようとしても出来上がったものは、もう殆ど修正不可能でした。ゆがみが起こりにくい製作方法は、当たり前のことですが、@紙の型紙(Fig.5)で作る方法、A爪楊枝で正3角形(Fig.13)から作る方法でした。

 これをまとめて、ゆがみの少ない順から書きますと、
 @紙の型紙(Fig.5)で作る方法、
 A爪楊枝で正3角形(Fig.13)から作る方法
 Bゴムひもとストローで作る方法、
 C綿棒で作る方法
となりました。もちろん、Cの綿棒も正3角形から作れば順位Aに等しくなります。

 ゴムひもとストローで作ったものはゆがみは少しありますが、形状記憶能力がありました。これは他の多面体の中に後挿入できたりする応用面があり、興味深い点です。

 紙で作った正20面体は、面でふさがれていて内部が見えませんが、スケルトン式正20面体は、内部が透けて見えるので、構造が観察しやすいというメリットがあります。

 実際、スケルトン式正20面体を透かしてみると、黄金長方形(おうごんちょうほうけい、英: golden rectangle)[4]、五芒星(ごぼうせい、英: pentagram)[5]などが、どこに内包されているかも良くわかり、正20面体には黄金比がぎっしり詰まっていることがよく把握できます。

 そのためには、ゆがみのないスケルトン式正20面体を作る必要があり、ここで調べた範囲内では上記Aの方式が最もよいと思います。これは、当たり前のことなんでしょうが、実際に作り検討してみて実感できました。

文献:
[1]科学実験クラブ府中
[2]例えば:正20面体展開図
[3]Wikipedia:ステレオグラム
[4]Wikipedia: 黄金長方形
[5]Wikipedia:五芒星

9. (付録)Visitor作品


 Fig.24は、本サイト訪問者の作品です。読んでいたら工作心をくすぐられてしまい作ってしまいました、ということです。



Fig.24. Visitor Fさんの作品




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Authored by AT. First upload:2014/3/20. Last modified 2014/4/6.

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