微生物による無放射能化
微生物を用いた無放射能化: MCTによる安定
および放射性の同位元素の転換
下記は、ウラジミール・フィソッツキー(キエフ国立シェフチェンコ大学、ウクライナ)およびアラ・コーニローバ(モスクワ州立大学)の微生物を用いた無放射能化の論文[1]を簡潔に説明したものである。
図1.福島の原発事故による各地の土壌
のセシウム>134 & 137沈着量
(出展:lib.tokyokeizai.net)
半減期が長寿命のセシウム-137、
Cs
137
(放射能≒2・10
4
bq)、を蒸留水に混ぜ非常にうすいガラス製フラスコ2個に入れた。フラスコのひとつには
MCT
(microbial catalyst-transmutator=微生物触媒転換体)を適量入れた。もう一つのフラスコにはMCTは入れてない。これは対照とする試験体である。 MCTについては、後述する。
Cs
137
は、セシウムの放射性同位体であり、質量数が137のものを指す。ウラン235などの核分裂によって生成する。ウラン235は原子力発電所において使われている。
Cs
137
は、原発事故によって周辺地域が放射能汚染されたり(図1)、1945年広島・長崎への原子爆弾投下によって地球上に放出されたりしている。また、1940年代−1960年代のアメリカ・ソ連の核実験、1954年ごろからの大規模な水爆実験や核事故で高濃度に放出された。
図2は実験結果を示している。初めの放射線強度を1として、それからの経過日数に対して、強度の変化をプロットしてある。
図2.実験結果。文献[1]の図を書き直してある。
図中のプロット
○
は、Cs
137
にMCTとCaの塩、CaCO
3
、を混ぜたもの、
□
は、Cs
137
だけの対照実験(MCTなし)の結果である。
対照実験(MCTなし)では、“通常の”放射性崩壊の法則が成り立っていて、半減期は30年であった。MCTとCa塩の存在するときで寿命τ
*
≒312日であった。これは寿命が1/35になったことになる。さまざまな塩(K, Ca, Mg, Na, Fe および P)を添加したMCTを用いた全ての実験で、同位元素Cs
137
の崩壊率が増加することを観測した。
放射能汚染水のなかに混合物として加えたK, Ca, Mg, Na, Fe および Pの純粋塩の化学元素は、どんな培養にも生物的に必要なものである。
MCTにどの塩を加えても、Cs
137
の崩壊速度が早くなったが、
最も早くなったのは、τ
*
≈ 310days(35倍の加速)であり、Cs
137
+MCT+CaCO
3
の場合であった。
Cs
137
の元素転換の反応で可能性ある反応式としては、
Cs
137
+p
1
=Ba
138
+僞,
が考えられる。この反応の結果、安定な同位元素Ba
138
が作られる。この反応はエネルギーの放出が得られる(僞 = 5.58 MeVで正である)。
ここに示した結果は、自然および工業的応用に対して、生物学的システム使用による安定および放射性同位元素の転換効果の将来的展望を示している。
これらの結果は、放射能汚染が、その初期に高レベルであったチェルノブイルの事故領域内の幾つかの隔離された領域の環境放射能レベルが異常に早く減少したという理由とその疑問に答えを与えることができる。
MCT (microbial catalyst-transmutator=
微生物触媒転換体)複合物とは何か
用いたMCT (microbial catalyst-transmutator=微生物触媒転換体)複合物の基本は、完全な共生状態にある数千の異なる微生物の種類で微生物シントロフィンの仲間である。
MCTは、下記のものを含む特殊な顆粒である:
代謝的に活性な微生物の濃縮したバイオマス(完全な共生状態にある数千の微生物の種類の微生物シントロフィンの仲間)
炭素およびエネルギー、リン、窒素、などの源。
いかなる外的条件でも長期間に渡り水溶液の中で安定な顆粒の形状に、全ての成分が保たれる粘着状物質
これらの顆粒は、タッシレフ教授により、アクティブな吸収剤として早期に提案されていた。
本論文には、「Cs
137
の半減期は30年であるが、Ca塩を添加したMCTを用いた実験で半減期は約312日になった。これは半減期が1/35になったことになる。」と記述されている。もちろん、ここで、Cs
137
の半減期は変わったのではなく、数多くあるCs
137
のうちの幾つかが順々に安定な同位元素Ba
138
に変化したので、放射線量が急速に減少していくという意味である。
福島の原子炉事故で環境に放出された放射性物質による土壌汚染は、その表面土をかき集めて袋詰めにしてどこか人から隔離した場所に集積しつつある。これをもって除染といっている。半減期は変化しないので真の除染とは違うのではないか。
文献
[1}Vladimir I. Vysotskii:
Observations of Biophysical Effects from Cold Fusion and LENR
(Auth
ored by A.T.)