フリーエネルギー技術開発の特徴と種々相

フリーエネルギー技術開発の特徴と種々相





Chap.6. ゼロポイントエナジーと悪魔(ディモン)

1. ゼロポイントエナジーとは何か

2. トーマス・バロン著“ゼロポイントエナジー:未来の燃料”

3. バロンによるゼロポイントエナジー概説(入門も兼ねて)
 3.1 はじめに、 3.2 カシミール効果、 3.3 ラムシフト、 3.4 古典的真空、3.5 チュートリアル、 
 3.6 宇宙論的ZPE、3.7 ZPEの実験、  3.8 はじめてのZPEのパテント、  3.9 音ルミネセンス、 
 3.10 ハロルド・パソフ博士のZPE、   3.11 慣性はZPE効果である、 
 3.12 ニュートンの法則はZPE効果、   3.13 大きな称賛


4. パソフによるゼロポイントエナジーの端書き
5. フォウォードデバイスの思考実験、その他
6. 量子真空エネルギーの抽出―米国パテントNo.7,379,286
7. ダイオードを用いてゼロポイントエナジーを捕獲するプロジェクト
8. ブラウンのパテント:ダイオードアレイ
9. 発明者ブラウンのその後など

10. マックスウェルの悪魔の研究
  10.1 真空管の中の悪魔の研究(フー・シンヨン、中国)
  10.2 フー & フーの磁場を用いたマックスウェル悪魔実験
  10.3 パーミノフ & ニクロフの磁場を用いたマックスウェル悪魔実験
  10.4 フー & フーおよびパーミノフ & ニクロフの実験の弱点


11. フリーエネルギーと熱力学第二法則・マクスウェルの悪魔
  11.1 熱力学第二法則
  11.2 マクスウェルの悪魔とその実現
  11.3 熱力学第二法則の破れ(コンデプディ & プリゴジン)
  11.4 フリーエナジー(FE)分野のマクスウェルの悪魔
  11.5 ヒノ教授の奇妙なデバイス
  11.6 冷える装置の熱力学第二法則の破れの可能性


12. カシミール効果の研究動向
  12.1 カシミール効果に関する研究の発展
  12.2 カシミール力の制御と表面粗さ依存性
  12.3 カシミール斥力による量子浮遊







Chap.6. ゼロポイントエナジーと悪魔





1. ゼロポイントエナジーとは何か




 まず、ゼロポイントエナジーとは何かを、簡単に(数式なしに)把握するためには、百科事典をみるのが手っ取り早いでしょう。

Web百科事典、Wikipedia によると次のように書かれている(抜粋)。

 零点エネルギー(れいてんえねるぎー、ゼロ点エネルギー、Zero-point energy)とは、絶対零度においても原子が不確定性原理のために静止せずに一定の振動をする場合のエネルギーである。

 零点エネルギーは量子力学の系 における最も低いエネルギーである。基底状態のエネルギーと言いかえることもできる。量子力学では、すべての粒子には波動性を持っているため、基底状態であっても振動した状態にあり、零点エネルギーというエネルギーを持つことになる。

 結果として、絶対零度であっても振動していることになる。たとえば、液体ヘリウムは零点エネルギーの影響で、大気圧中ではどんなに温度を下げても固体になることはない。

 零点エネルギーの考えは、1913年のドイツにおいて、アルバート・アインシュタインとオットー・シュテルンによって生み出された。この考えは1900年に書かれたマックス・プランクの式を元にしている [1] [2]。



[1]Laidler, K. J. (2001). The World of Physical Chemistry. Oxford University Press. p. 324.
[2]Einstein, A.; Stern, O. (1913). "Einige Argumente fur die Annahme einer molekularen Agitation beim absoluten Nullpunkt". Annalen der Physik 40 (3): 551.



2. トーマス・バロン著“ゼロポイントエナジー:未来の燃料”




 トーマス・バロン(Thomas Valone)は、ゼロポイントエナジーに関する書物を著している。彼の著書(下右図参照)[1]は、FE研究者なら、ぜひ読んでおきたい書物のひとつである。以下、その一部を抜粋し概訳して紹介しようと思う。
 

トーマス・バロン博士 [2]

物理工学者。発展段階のエネルギー科
学に25年以上の経験をもつ。The World
Innovation Foundation のコンサルタント
フェローであり、数冊の著書がある。ケネ
ディ・ウェスターン大学で博士号を得た。
ニューヨーク州立大学修士。

T.バロン著:ゼロポイントエナジー:
未来の燃料 [1]


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大要

 ゼロポイントエナジー(ZPE = zero point energy)は、全宇宙に充満するエネルギーの海であり、科学者達は、これを、しばしば、“物理的真空”と呼んでいる。

 おそらく、古いエーテル論(ether theory)あるいは聖書にあるような天空、それは、存在が知られているエネルギーの最大の海であり得る。大きいばかりではなく、そのエネルギーは核エネルギー密度を超えると見積もられる。

 そのひとかけらですら、金の重さに匹敵するのである。それは何だろう? 絶対温度零度の物質の分子がもつ力学的エネルギーである。しかし、殆どの人々は、このゼロポイントエナジーが何であるのか、また人類が必要なエネルギーに役立つかどうか、よくわかってはいない。

エーテル論

 音が空気や水を媒体として使っているのと同様に、光は何かの媒体を使っているであろう。マイケルソンとモーレーは、そのような媒体は存在しないことを証明した。しかし、シルバーツース等[3]は彼らの実験は精度の点で問題としている。

 それは、家庭や、くるまや、あるいは宇宙旅行に無限のエネルギー源を提供するであろうか? 人に聞けば人により見解は異なっていて、ある人はZPEは何でも出来るし、またある人は、何も役に立たない、と答えるだろう。

 そのエネルギーはどうやって電気エネルギーに変換できるのか? この海の中に(汽船の)外輪で乗り込むことをストップさせるのは、20世紀初期の教育のせいなのかもしれない。 

 ZPEの基本的説明は何か?空間は、量子化されていて実際の粒子が詰まっている。米国特許庁、NASA、Physical Review, Scientific American, Discover, New Scientist を揺れ動かしている新発見とは何か? 我々が知っているべきZPEの幾つかの概念とは何か? これらの質問には、この本が以下の章で答えるであろう。(以下略)

ゼロポイントエナジーとは?

 おそらく、ZPEは漫画動画の映画“ザ・インクレディブルズ”の中であったように銃から撃ちだすことができるかもしれない。全宇宙に満ちているゼロポイントエナジーの広大なフィールドをゼロポイントフィールド(ZPF)として語る科学者達もいる。(以下略)

 (訳注:これは市販書籍なので、引用はここまでとしたい。この書の目次をみる。なお、この書は次節の論文を基にして平易に書き直したもののように思われる。したがって、両者には重なる部分がかなり見られる。)



文献

[1]Thomas Valone: Zero Point Energy: The Fuel of the Future
[2]Thomas Valne: https://www.youtube.com/watch?v=H-l2cq-MXUs
[3]Silvertooth,E.W. et al:"A new Michelson-Morley Experiment" Physcs Essays, V. 5.1992.p.82-89






3. バロンによるゼロポイントエナジー概説(入門も兼ねて)




 これは、トーマス・バロンにより書かれた論文[1]の抜粋・概訳である。専門的過ぎるところは、省いてある。克明に読みたい場合は原著[1]をみられたい。

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3.1 はじめに


 
The Sea of Energy
著者John.E. MorayはT. H Morayの息子で
ある。若いころ父親の会社で働いていた。
彼にとって父はヒーローであった。


 歴史上、はじめて、多くのメディアによる注目が全宇宙に充満するエネルギーの海に向けられた。それは、最大のエネルギーの海であり得るし、それが存在することが分かっているし、我々はその海の中に浮かんでいるのである(この考えは、モレイ著“エネルギーの海”The Sea of Energy by T. Henry Morayによる)。

 大きいばかりではなく、そのエネルギーは核エネルギー密度を超えると見積もられる。だから、そのひとかけらですら、金の重さに匹敵するのである。それは何だろう? 多くの人は、ゼロポイントエナジー(ZPE)が何であるのか知らない。

 大抵の人たちは、実際の粒子のゆらぎは、それに寄与しているが、ファン・デル・ワールス力で全て説明できるのではないことは承知している。

 それは、家庭や、くるまや、あるいは宇宙旅行に無料で無限のエネルギー源を提供するであろうか? 人に聞けば人により見解は異なっていて、ある人はZPEは何でも出来るし、またある人は、何も役に立たない、と答えるだろう。

 そのエネルギーはどうやって有効な電気エネルギーに変換できるのか? ZPEの基本的説明は何か?

 米国特許庁、NASA、Physical Review, Scientific American, Discover, New Scientist を揺れ動かしている新発見とは何か? 何故ZPEは、宇宙論的反重力の最近の裏づけにおいて重要なのか? カシミール効果が一つのエネルギー源なのか? 

 本稿は、最近の発展を再考することを目的としていると同時に、専門家でない人たちへの概論的入門となることも目的としている。

(訳註:"The sea of energy"は、旧版ならfree-energy-info.com からダウンロード(D.L.)可能である。)




3.2 カシミール効果




 ゼロポイントエナジーは、究極の量子フリーランチと言われている( Science, Vol. 275, 1/10/97)。量子力学の初期、ディラックは、真空は負エネルギー状態の粒子により実際に充満していることを理論的に説いた(Proc. R. Soc. London A, 126, 360, 1930) 。

 こうして、真空は全然空っぽではないという“物理的真空”の概念が立ち上がった。量子力学は、また、見えない粒子が短い時間物質化することができ、このバーチャルな粒子の出現は、測定可能な力を及ぼすことも予言した。

 ヘンドリック・A・G・カシミール (Phys. Rev. 73, 360, 1948) は、そのような力を予言したばかりでなく、何故ファン・デル・ワールス力が原子間距離を長く離すと予想に反して小さくなってしまうのかも説明した。彼は、この力Fは、F=K/d4であるとした。ここで、K=nhc/480である。

 これに続いて、カシミール効果は、非伝導性の板を用いて証明されたのだが、カシミールの1948年の論文に基づいた伝導性の板を用いてカシミール効果を証明する科学的必要性が常に存在していた。

 ラムルー博士(現在はロス・アラモス研究所)は、ねじれ振子に金メッキした平行板をくっつけて実験した。ここで、平行版の間隔は1ミクロン以下に離してある(Phys Rev. Ltrs., 78, 1, 97)。振り返って回想してみると、彼は、自分が行った実験のなかで最も知的満足が得られた実験の一つであったことに気づいた。というのは、結果として理論値に非常に近い値(5%以内で)が得られたからである。

 カシミール効果は、真空中の活動によってのみ作られる力であると断定されてきた。カシミール力は、小さな距離では非常にパワフルでもある。それは温度に依存しなくて、板と板の間の距離の4乗に逆比例している。したがって、二枚の板が互いに近づくにつれ、板の外側のバーチャル粒子は、板の間に現われるバーチャル粒子の減少量を指数関数的に増加する力で圧倒することになる。

 また、注目すべきことは、その周波数依存性は、3乗であり、その力は誘電体で変化し、あるいは狭帯域ミラーで共鳴する、ということである(Phys. Left. A 225, 1997, 188-194)。

 ラムルー博士の結果は、量子電気力学(QED=quantum electrodynamics)に慣れている人には何も驚くに当たらない。とはいえ、ラムルー博士の結果は、自然に発生したり消滅したりする粒子と波動を常に産んでいる(全てに広がるところの)真空を予言しているという普通ではない理論的予言に対し物質的確信となるものである。

 それらの存在時間は、不確定性原理により厳密に制限される。しかし、それらは、短い寿命の間に飛び跳ねまわる間、ある大混乱を引き起こす。攪拌するような量子の泡立ちが宇宙を通して広がり、原子内の空の空間を満たしさえする。

 “無の形” (“The Shape of Nothing” The New York Times 1/21/97) に示された図は、亜原子のみならず亜素粒子が描かれている。物理の理論は、原子核の直径よりずっとずっと小さい無限小のスケールにおいて、量子のゆらぎは、噴出したり崩壊したりする泡、バーチャル粒子、を作り出し、これは時空の織物のトポグラフィックなゆがみとして視覚化されることを予言している。

 ZPEからくるフリーエナジーに対するもう一つ重要な意味は、カシミールが3次元的体積効果についても述べている事実である (Physica XIX,1956, 846)。これは、最近、与えられた体積中における量子電磁気学の場を解析するための相対的ストレス・エナジー・テンソルで用いられている。

 “比較的”シンプルな計算で、重力の圧縮により電子密度が増加するとき、エネルギーの発生が起こる、ということが示されている。“中性子の星の生成の間にカシミール効果により発生したエネルギーの出力は、新星および超新星の爆発を説明するのに充分であると分かった。”(Sokolov, Phys. Left. A, 223,1996, 163-166)。

 科学雑誌The New Scientist (July 1987, “Why Atoms Don’t Collapse”何故原子は崩壊しないか?) は、ZPEの重要性に関して、印象的な支持をし、下記のように述べている。

 
 “ゼロポイントエナジーが、電子を基底状態の軌道に安定化させる力学的平衡状態がある。物質の非常によい安定性それ自体、電磁気学的ゼロポイントエナジーの基盤をなす海に依存していると思われる。”





3.3 ラムシフト


ラムシフト

 ディラックの電子論によれば,水素原子の 2s1/2 準位は,2p3/2 準位と同じエネルギーをもつはずであるが,実際にはわずかに高いほうにずれている。
 このずれをラムシフトという。 1947年に W.ラムと R.レザフォードが超短波による磁気共鳴で 2s1/2 準位から 2p3/2 準位への遷移を起させてエネルギー差を測定した。

 出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典。




 ZPEを検証する、もう一つの歴史的に重要な実験は、“ラムシフト”と呼ばれるものである。1940年代にウイリス・ラム博士により測定されたが、ゼロポイントの揺らぎ効果を原子レベルで実際に示した。電子は、その原子軌道からわずか上方にずれている。

 物理学者マーガレット・ホートンは、ラムシフトを“1原子カシミール効果”として記述していて、ZPEの揺らぎは原子あるいは原子的粒子の近傍においてのみ起こる必要があると予言している(Phys. Rev. A 8/94) 。これは、コルテイック博士の上記の発見に一致すると思われる。

 ZPE揺らぎは、基本的に不確定性原理に基づいている。これは、いままで破れがみつかっていないので、まもなくいつの日か法則になると予言されている。さらに、今日、物理学者の大多数は、自然放出およびラムシフトは完全にZPEに起因するものとしている(ホートン論文)。

 このことは、「それはランダムであるが、もはや“自然放出(spontaneous emission)”と呼ぶことは出来ず、その代わりに、ランダムな性質はあってもレーザー光のように“誘導放出”と称するべきなのである」ということを誰に対しても信じさせることになるかもしれない。

 量子力学のテキストは、既にこのことを肯定的であって、“最小で可能な、場のエネルギー1/2量子。これは、電磁場のゼロポイント振動により誘導された放出である放出を示唆している。”、というように新しい説明を行っている( Schiff: Quantum Mechanics, 3rd edition)。


3.4 古典的真空





 ZPEに関して教育的観点から書かれたベストのものの一つは、“古典的真空”と題したチモシー・ボイヤー博士による著述である(Sci.Amer., 8/85, p. 70)。ボイヤーは、多くの著作があり、高く評価された物理学者である。彼は、ZPEから期待される全ての特徴を述べているが、ここでZPEは周波数スペクトルや、エネルギーと力も同様、動く基準枠(reference frame)すら含めている。……

古典的真空

 古典的な理論における真空は「物質もエネルギーも無い空間」であるが、量子論における真空は仮想粒子の対生成と対消滅が常に発生しており、決してエネルギーがゼロの空間ではない。したがって真空はあらゆる場に対して最低のエネルギーを持っている。

 出典:ウイキペデイア:偽の真空


 換言すれば、ボイヤーは、17世紀においては、完全に空虚な空間は、単に物質、特に気体、を取り去ることによって作ることができたと述べている。それが我々の第1の真空の概念であった。全ての気体を取り除くことである。

 19世紀の後半になると、その領域はまだ熱放射を含んでいることが明らかになった。しかし、熱放射は冷やせばなくなるように思われていた。したがって、真の真空を得る第2の概念は温度ゼロまで冷やすことであった。絶対温度ゼロまでどんどん近づけていく。そうすれば、我々は真の真空が得られる。そうでしょう?

 それ以来、理論も実験も共に、真空には熱放射がないことと、もし絶対温度ゼロに下げられたとしてさえ、それにこだわることを示していた。したがって、それは、簡単に“ゼロポイント”放射と呼ばれた。

 さらなる証明は、フォワード博士が、チュートリアル・テキストで指摘しているように、物理学者達がヘリウムを絶対温度の数マイクロ度まで冷やしたときに、ヘリウムは液体の状態のままであったことから明らかである。ZPEだけが、ヘリウムを凍結させないでおくエネルギー源として説明できる。

 真空の他のもう一つの様相は、真空ZPEの一定のバーチャル粒子束は、原子数Z=137あるいはそれ以上の大きな粒子の境界近くにおいて、より弱いバーチャル(短寿命の)になり得ることである。これは、結合エネルギーが電子の静止質量に等しいか、それを超えるとき、強い電場の勾配が、真空の莫大な崩壊をよりいっそう引き起こすからである。

 さらに、もし超重原子が作られると(Z=173)、結合エネルギーは、電子の静止質量の2倍を超え、真空から物質と反物質の対生成が起こる。電子は、核の中に押し込まれ、ポジトロン(反電子)の自然放出が起こり、これがフリーエナジーの真の源を構成する。

 
 “逆説的にいえば、臨界を越える電荷付近の真空は空にすることができない真空である (Sci. Amer. Dec. 1979, p. 150)。”


 そのような物理学の発見は、先端エネルギーの発見の会議を提供していた挑発的な名前の雑誌"Infinite Energy(無限エネルギー)"に根拠を与えることとなった。……



3.5 チュートリアル

  (この節は、読みとばしても、話しの連続性に問題はない。)

 科学的にもっと詳しく知りたい人のために、ZPEの教育的説明とZPEの導出について以下述べる。ハル・パソフ博士は、論文の中で、電磁気的ゼロポイントゆらぎの存在は、量子化の結果として得られた量子論からの明白な予想であるということについて考察している。基本的にいって、量子力学は、まさに単純にエネルギーを小分けし、また物質を小分けすることを扱っている。

 だから、我々が話しているものは、実際、“物質とエネルギーの量子化”である。それが、ゼロポイントエナジーの存在を導き出すために前提とすべき全てである。ロバート・フォワード博士の非常に興味深い報告(Phillips Laboratory Report entitled,“Mass Modification Experiment Definition Study”,#PLTR 96-3004)は、ZPEの単純調和振動の基礎を理解するのに役立つ。彼は次のように記述している:
 

 
 Quantum Lesson 101:  我々が扱っている現象には二つのカテゴリーがある: 1)物質の量子化、したがって物質ゼロポイントゆらぎ、と同時に、2)エネルギーの量子化、したがって、エネルギーあるいは“放射型”の量子化である。これが覚えておくべき初めのlessonである。



 さて、物質の面に関しては、原子の内側、あるいは物質の内側において、我々は、実際にばねに対する式を使うことができる。ここで、標準的な力Fは、kの平方根を質量mで割った値に等しい。kは、ばね定数である。

 この場合、我々は、それを電子雲のばね定数として用いている。ここで、電子雲は原子の核の質量に作用する(荒っぽい用語の)ばねとして作用している。もちろん、ここでギブアンドテイクが少々存在する。作用している力には吸引と反発の両方存在するし、また振動の自然周波数は、その物質部分を見ているときのみ量子化される方向に向かう。

 したがって、我々が、物理学者が“形式”(量子力学に翻訳する形式的なアプローチ)と言うように、量子力学的観点においてこれを導き出すとき、我々はアインシュタインの式、E=hfを得る。これは、プランクの定数(h)の点でエネルギーに関係する。

 これらは、この点までは、非常にシンプルな方程式である。また、次の式も同様であろう。しかし、研究目的は、物質中の振動の量子を記述することと、真空中における放射部分、フォトン、も記述することである。

 フォーワード博士は、式を導いて次のように言っている: 量子力学の方程式が(Eの両側にある括弧で)平均エネルギーを決めるのに使われたとき、その答えは、

E = n(T) + hf/2


であった。したがって、Tがゼロになるとき、生成されるフォノンやフォトンの数もゼロになる。

 このように、温度ゼロでさえ、量子力学は原子(複数)の各々は依然として平均の残余エネルギーhf/2をもっている(上式でnをゼロにしてみればわかる)。物理学者たちは、このことに、もう数年間取り組んでいる。なぜならば、fを際限なく増加させることが許されるならば、無限の量のエネルギーが得られるように見えるからである。

 
“Free Energy: The Race to Zero Point


 カシミールが、それを予言し、いろんな科学者がそれを証明して以来、この単純な方程式は、ゼロポイント場とゼロポイントゆらぎの理論の基礎をなす、実質的に、全てなのである。それに関して面白いことは、1/2というのがあることであって、これは少々惑わすものである。しかしながら、我々は覚えておく必要があるのであるが、フォワード博士も指摘しているように、本当の方程式は、

E = hf


である(厳密には、量子場理論は、真空のエネルギーを得るのにゼロポイント場モードの固有値の無限の総和を取っている。“Absence of a zero-point ambiguity”, Phys. Left. B, 358, 1995, 56を見られたい)。

 したがって、量子の半分に対してのみ得られる平均のエネルギーを取り扱っているのである。パソフによって、“partons”とよぶ他の用語が、振動子の最小の量子(真空中あるいは物質中で得られるプランク振動子)を指すのに使われている。 

 したがって、どこにでも存在する1/2フォトンや1/2粒子の代わりに、我々は、実際に、いつでも同時に物質化されるフォトン(複数)あるいは粒子(複数)の半分だけを見ているのである。

 ZPEに関する、さらなる情報としては、2時間ビデオ、 “フリーエナジー: ゼロポイントへの競争”(Free Energy: The Race to Zero Point) も入手可能である。これは私が技術的相談役を務め、Lightworks Audioにより製作された。ビデオはIntegrity Research lnstituteからも入手できる。

(訳註)無料ビデオなら、 Dr Thomas Valone : Feasibility of extracting Zero Point Energy がある。これは約1時間の口演である。youtubeには、このほかにThomas Valoneで検索すれば、ZPE、フリーエナジーなどに関連する幾つかのビデオがヒットする。





3.6 宇宙論的ZPE

  

宇宙定数

 アインシュタインの一般相対性理論に基づく重力場の方程式に導入された定数。1917年に、アインシュタインが膨張も収縮もしない静的な宇宙モデルを得るために導入した宇宙項の係数を指す。

出典:デジタル大辞泉


 最近、サイエンス誌 (Vol. 282, Dec. 18, 1998, p. 2157) に、“本年度の大躍進”という表題でZPEが取り扱われている。2チームの天文学者たちが、遠い銀河が加速度的に遠ざかっていることの確信を得たという。これは、現在、全天文学者の2/3が、そのデータを認めているのである。かくして、アインシュタインにより想像された宇宙定数は、再考されることになり、反重力のフォースの存在が主張されている。

 ( 宇宙定数の分かりやすい説明を読む。

 物理学者たちは、またこのフォースを、“何もない空間(この空間は空間にそれを引き離すように、ばね的弾力性を与えている)のなかで現われたり消えたりするエヴァネッセント粒子”として説明している (“Cosmological Antigravity”, January, 1999, p. 53):  

 
 “これらのバーチャル粒子により表された集合エネルギーは、他の形態のエネルギーと同様に、重力の力を及ぼすことが出来る。この力は、まだ理解されていない物理的原理に依存して吸引あるいは反発のどちらもあり得る。”



 宇宙定数は空間それ自体に固有のエネルギーを表している。と同時に、宇宙の進化のこの特別な時間において、宇宙における通常の物質の平均密度(1gm/cc)に殆ど厳密に等しい。

 上記の概念の説明を助けるために、誘電体プレートと磁性体プレートで作製した空洞を用いて反発のカシミール力が実験室内の実験で得られるかもしれないということ(Boyer, Phys. Rev. A, 9, 1974, 2078 or Kupiszewska, J. Mod. Opt 40, 1993, 517を参照)に言及しておくことは重要である。したがって、宇宙論的効果の方が、今一般雑誌が説明していることよりも、説明が容易であるかもしれない。





3.7 ZPEの実験

  

 ZPEは、バーチャル粒子の流れによるものであり、この流れは高い電場勾配により増加するので、電子の表面近傍では、ZPEバーチャル粒子の流れは、ハエの一群がその周りでブンブン飛び回っているように、非常に高くなると仮定するのは理にかなっている。

 サイエンスニューズ誌の報告(2/8/97)では、“1930年代以来、理論家たちは、バーチャル粒子は電子に覆いかぶさっていて、事実上、離れたところで観測される電荷および電磁場の力が小さくなっている。”ということを提案している。

 したがって、初めて、コルチック博士 (Phys. Rev. Ltrs. 1/20/97) は、55ギガデンシボルトの粒子加速器で、他の粒子を発生させることなしに、電子を取り囲んでいるバーチャル粒子雲を貫通するように設計した実験を行った。

 彼のデータから、微細構造定数の新たに得られた値は、1/128.5であった。これは、完全に覆った電子に対して通常観測される値の1/137より小さい。微細構造定数は、電子の電荷の二乗をプランクの定数と光速で割ったものに等しい。

 ZPEからフリーエナジーを得る概念に関しては、その可能性を研究したジャーナルの論文は、 “The extracting of electrical energy from the vacuum by cohesion of charge foliated conductors” (Phys. Rev. B 30, 4, 84)である。

 
フォーワードによる真空揺らぎバッテリー
のための螺旋デザイン[2]


 フォワード博士が、電気エネルギーを真空から捕獲し電荷を蓄積するであろうZPEバッテリーとして右図に示すランプウェイ状の螺旋(あるいはスプリング)について述べている。このスプリングは、カシミア力により圧縮されようとするが、しかし蓄積された電子の同種の電荷が反発力を引き起こし、スプリングの間隙の大きさをバランスする(右図参照)。

 つまり、消散と使用により圧縮するが、電荷蓄積により物理的に拡張するする傾向がある。それは、 “The Casimir force for passive mirrors” (Phys. Left. A, 225, 1997, 188) あるいは、“Casimir forces between beads on strings and membranes” (Phys. Left. B, 347, 1995, 56) という論文のなかのマルチレイヤー・ミラーに類似である。この論文では、ビーズの間のバーチャル粒子の交換が解析されている。……

 フォワード博士は、真空中の電磁気の波長には、知られている限界はないというクラシカルな見解に同意している。これに関するパソフ博士の研究から分かることは、パソフ博士はサクハロフの研究に基づいたカットオフに関する多数意見を支持しているということである。

 カットオフ周波数(おそらく hf=mc2を考慮)は、プランク周波数と呼ばれ、約1043Hzである。このことは、我々が知る限りでは、無限のエネルギーが得られるといっているモレイ・キング (著書:Tapping the Zero Point Energy)およびフォワード博士の説に対立している。

 後節で、パソフ博士の理論が、重力、慣性、熱、および電気をも、ZPEの考察から直接導き出していることを知るであろう。フォワード博士の論文では、超微細な金属と誘電体の層の微小サンドウィッチを使うことを示唆している。彼は、ZPEは、エネルギー源として一定のポテンシャルもっているようにみえる、とも指摘している。

 他の可能性あるZPEの実験は、“Casimir Effect at Macroscopic Distances” (Phys. Rev. A 48,1,93)という論文である。この論文は、共焦点の光学共振子を実験室内装置の感度内で用いて数cmの距離におけるカシミア力を観測することを提案している。

 まとめると、ZPEが存在することの実験的証拠は;

 1)カシミア力、2)ラムシフト、3)ファンデルワールス力、4)反磁性、5)自然放出、6)絶対温度がマイクロ度の液体ヘリウム、7)量子雑音、であり、最も最新のものは、8)宇宙論的反重力である。また、慣性と重力もZPEの証拠として期待されている。





3.8 はじめてのZPEのパテント

  

 ZPEが米国のパテント(US.Pat.5,590,031)として初めて登場するという歴史が96年12月31日に作られた。フランク・ミード博士(エドワーズ空軍基地)は、ビート周波数の半球反射体を用いてゼロポイント放射の球形捕集体の受信機を設計した(右図)。彼は、次のように述べている。

 
ミード博士のZPE共振の応用と電気への変換[3]


 “ゼロポイント電磁波放射は、もしかして惑星間旅行の乗り物にパワーを与えるのに使われるかもしれないし、社会の他の需要に応えるかもしれないが、まだ使われてはいない”


 ゼロポイント電磁波放射を電気エネルギーに変換することを提案して、ミード博士は、約1014Hzまで伸びる高い周波数と取り組んでいる。(見込みを述べると、ギガヘルツレーダーだが、それはたった1010くらいに過ぎない。可視光は約1014Hzであり、ガンマ線は20乗に達するが、波長は原子より小さい。)

 少し異なったサイズの捕集器(図の12、14)で、システムはビート(うなり)周波数(図の24)を発生する(これは元の1次周波数16よりかなり低い)。差の周波数が、その“ステップダウン周波数”を増幅する回路の後段で作られる。

 例えば、百万分の一の精度で微小球12,14を作ることが達成されれば、1020Hzの信号から、1014Hzのビート周波数が得られるであろう。しかしながら、私はミード博士に勧めたいことは、“周波数分割”を含む真の周波数逓減(ステップダウン)であって、これなら機械加工精度は高くなくてもよく、周波数出力にもっと大きな差を生ずると思う。

 彼の設計の重要部分は、物理的装置そのものであって、それが伝導体であれ誘電体であれ、ZPEと共鳴する周波数に対応しているということである。論文The Casimir force for passive mirrors” (Phys. Left. A, 225, 1997, 188) の受動的ミラーとよく似ているように、ミード博士は、伝導体の物理的な設計が共鳴特性を決定付けるであろうことをよく理解している。

 もし、大きな球を使えば、非常に長い、低いエネルギーの周波数と共鳴するであろう。しかしながら、彼は、これが微小化されれば(ナノテクノロジーで、サブミクロンのレベルまで)、周波数の3乗(f3)依存性が非常に効いてきて、エネルギー密度は、ずっと高くなることを指摘している。……

 ZPEの背後にある概念とその理解については、ミードは、それを“ゼロポイント電磁放射エネルギー”と呼んでいる。ラムルー(Lamoreaux)博士は、それを“バーチャル粒子の流れ”という。何故なら、このエネルギーの幾許かを生成し反応する粒子は真空から飛び出したり戻ったりしているからである。

 そう、それは別の観点なのである。もちろん、ニューヨークタイムズは、それを簡単に“量子の泡”と呼んでいる。しかし、それについての重要なことは、ロバート・フォワード博士の論文によれば、“量子力学的ゼロポイント振動子は真実である。”ということである。





3.9 音ルミネセンス

  

音ルミネセンス

 音の刺激によるルミネセンス。超音波により液体中に発生した微細な気泡が急激に高温状態になり、パルス状の光を発する現象。また、その光。気泡が圧壊して液体の分子を励起し化学発光を生じる場合は、音化学ルミネセンスという。

出典:デジタル大辞泉



 音ルミネセンスは、ZPEを捕獲するか?この質問は、光と極端な熱を放出する水中の超音波キャビテーションの実験結果に基づいている。“超音波の化学効果”(Sci. Amer. 2/89)は、どうして直径100μmの泡が、5,500℃、あるいは太陽表面温度に近い温度を作って激しく爆縮できるのか説明している。

 物理学者、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のセス・パッターマンは、著述“An Expanding Knowledge of a Tiny Bubble’s Burst” (Washington Post, 8/5/96)のなかで、1マイル/秒の衝撃波の中には、水中の蒸気の分子の電子を剥ぎ取り、光放出を起こす温度まで加熱するのに充分なネルギーがあることを説明している。

 明らかに、水中に溶けているアルゴンの存在は、可視光や紫外光を明るく発光させるための決定的な要素である。しかしながら、この光のスペクトルの性質を理解するための決定的に重要なことは、それが、イオン化した気体の既知のスペクトルに一致するかどうかである。

 クローデイア・エバライン博士は、彼女のパイオニア的論文“Sonoluminescence and QED” (Phys. Rev. Left., 76, 3, 842, 10/96)のなかで、ZPEスペクトルのみが音ルミネッセンスの放出スペクトルに一致する、したがって音ルミネッセンスはZPE現象に違いない、と述べている。

キャビテーション(cavitation)

 液体の運動によって、液中が局部的に低圧となって、気泡を生じる現象。気泡内は蒸発した気体、分離した溶解ガスなどで満たされる

出典:デジタル大辞泉



 これは、グリッグのハイドロソニック・ポンプのようなものを理解する助けになる。ハイドロソニック・ポンプの水はキャビテーション・モードにおいて青色に光るが、これは過剰エネルギーが出力されるオーバーユニテイ状態で常に見られる (Inter.Symp. on New Energy, Denver, 1996 & U.S. Patent #5,188,090)

 ポストの記事も、キアヌ・リーヴスが主演の映画“チェイン・リアクション”を鑑賞して低温核融合が起こるために充分な熱がある可能性について考察している。私は、この映画の鑑賞を強く推奨する。何故なら“フリーエナジー”という言葉を初めて実際に使用した映画だからである。

(映画チェイン・リアクション(1996): 新エネルギー開発に絡む陰謀に巻き込まれた青年エンジニアの決死の逃避行を描いたサスペンス・アクション。シカゴ大学の若きエンジニア、エディ(キアヌ・リーヴス)はバークレイ博士が率いるプロジェクト・チームの一員として、石油に代わる画期的な新しいエネルギー発生装置“音ルミネセンス”の開発に成功する。……)

 ……

 音ルミネッセンスとキャビテーションは、ゼロポイントエナジーにアクセスするのに必要な衝撃波を発生するが、核融合を発生させるには、その100倍もの熱が必要という科学者もいる。しかしながら、“高圧低温核融合”を研究している科学者達の中には、必要条件は満たされているという科学者達もいる。

   実際、IEEE Spectrumの1997年1月号は、UCLAの物理学者ロバート・ヒラーの計算を引用しているが、音ルミネッセンス放射の黒体等価量は、100,000°Kに匹敵するとしている。Scientific American (12/97) のヤムの記事は、最近のノーベル賞受賞者ジュリアン・シュビンガーの研究をとりあげて、次のように言っている。

 “基本的に、泡の表面はカシミア力のプレートのように働くと想像される。すなわち、泡が縮むとき、真空エネルギーのより大きなモードを締め出す、それが光に変換するのである”

 UCLAの科学者達は、最近、音ルミネッセンスの閃光が続く時間の長さを測定した。バーバーおよびパターマンは、それはたった50ピコ秒かそれ以下の時間にすぎないことを発見した。それは、何らかの原子過程で作られる光に対し短かすぎる (IEEE Spectrum 1/97)

 原子過程と比較すると、原子過程では少なくとも数10ナノ秒の光を放出する。これは、ZPEが放射源であるというエバラインの提案を多くの人に評価させることになる。





3.10 ハロルド・パソフ博士のZPE

  



 
パソフ博士[4]
 ハロルド・パソフ博士は、物理学者であり、アンドレイ・サハロフ博士の重力と慣性の理論を発展させることを続けてきた。彼が成し遂げたこと、それはいまやNASAにさえ衝撃波をもたらしているのであるが、彼によって重力は、ZPEに直接関係していることが、いまや理論的に証明された。

 したがって、とても魅力的な新しい理論的イメージが提案されたわけであり、例えば、パソフ博士は、彼の論文 “Gravity as a Zero Point Fluctuation Force”, (Phys. Rev. 3/89)のなかで、重力質量とそれに関係した重力効果は、粒子の運動により引き起こされた電磁的ゼロポイント(換言すれば、ZPE)から、自己矛盾のない方法で出てくる、ということを指摘している。

 チッタベベーグングあるいは粒子ジッタリングもまた、ゼロポイント揺らぎの結果である。パソフは、それは既に統一場を構成していると信じている。彼は、マイスナー、ソーン、ウィーラーが著した重力テキストを参考にしている。このテキストは一般相対論の大学院過程で、しばしば、使用されている。

 基本的に、その本の中で、概略的には、重力への六つのアプローチがある。パソフ博士が強調する一つのものは、特に、サクハロフが展開したものである。 論文“Gravity as a zero-point-fluctuation force” (Phys. Rev. A 39,5,1993)のなかで、彼は、サクハロフ博士は、重力は基本的相互作用では全くなく、物質が存在するとき真空中における変化によりもたらされる誘導効果であると見なしていることを指摘している。

 これについての魅力的な部分は、“重力の力が長距離効果であるときは、質量は力学的エネルギー、内部粒子ジッタリングにより引き起こされたゼロポイントに相当する”ということである。低い周波数の長い距離のフォースは現在ファンデルワールス力に関係しているとされる。(ファンデルワールス力は、コロイドや弱い相互作用のいろんな液体に見られる。)

 パソフの理論では、重力は、ゼロポイント放射スペクトルの低い周波数によって、直接的にゼロポイントフィールドに関係している。

   我々が、ZPEが周波数の3乗依存性をもっているとして考察すると、ハチソン効果を思い起こさせる(Intro. to ‘Free Energy: The Race to Zero Point’, report published by Integrity Res. Inst.を参照)。これも 3乗依存性をもっている。

 ハチソン効果は、高圧のAC変調のDC場の影響により重力に反発する物体(伝導体も非伝導体も)を説明するのに用いられる。ここで、物体は連続的で、一様に加速される。科学者達は、ハチソン効果を説明する助けになるかもしれない放射反応を扱った3次のローレンツ・ディラック方程式以外には、そんなことが起こるのを決して理解しなかった。

 自然界の力は、一定の加速を作り出す傾向がある(F=maによる)。パソフの論文の運動方程式で予言された3次効果は、直接ゼロポイントエナジーに関係しているし、ハチソン効果に深く入り込む洞察を与えている。それは、また、ビデオ“Free Energy: The Race to Zero Point” が、米陸軍によるハチソン効果の評価(米陸軍は、その報告を即刻機密扱いにした)を示していることに注意する必要がある。





3.11 慣性はZPE効果である

  



 
エルンスト・マッハ
エルンスト・ヴァルトフリート・ヨー
ゼフ・ヴェンツェル・マッハ(Ernst
Waldfried Josef Wenzel Mach、
1838年2月18日 - 1916年2月19日)
は、オーストリアの物理学者、科学
史家、哲学者。 出典:Wikipedia

 ローレンツ力はファラデーの法則を記述するのに使われている。例えば、磁場中を磁場に垂直に動く荷電粒子があるとき、磁場はその粒子をどちらへ動かすのかを記述するのに右手法則を使う。この例では、電場、磁場、および力は互いに直交している。

 ローレンツ力は、いまや、パソフによってPhysical Review A (49, 2, 94)の論文のなかで“加速されたフレームにおけるゼロポイントフィールドの既知のスペクトルの歪から起こる電磁気的抵抗”と彼が呼ぶものに直接的に起因するということが導き出されている。

 物理学者たちは、アインシュタインはマッハの原理に非常に興味をもっていたということを、しばしば聞いている。エルンスト・マッハは科学者というより哲学者であったが、もし何か動かない参照枠があるならば、そのときのみ我々は慣性というものを理解可能となるという概念を展開させた。

 彼は、遠く離れた星を参照枠として選んだ。これは、アインシュタインだけでなく、それ以来実際に惰性の原理を説明しようとする他の人達によっても、理解された。というのは、遠方の星は、我々が見たところ宇宙のなかで比較的安定な参照枠として見なすことが可能だからである。

 パソフは、“ZPFは、したがって、マッハの宇宙参照枠としての役割を担う。また、興味深い点は、効果への貢献の量、この場合は慣性質量だが、ZPFの非常に高い周波数成分に起因している”と述べている。

 それから、彼は、マッハの原理に対する原因と定量化できる基礎を示し、ローレンツ力の磁気成分は、ZPEと物質の相互作用の中において生起すると説明している。





3.12 ニュートンの法則はZPE効果である

  



 パソフによる他の理論的ブレイクスルーは、ZPE電気力学からのニュートンの法則(F=ma)の導出である。それは、加速された参照枠におけるゼロポイント・スペクトルの既知のゆがみに関係しているように見える。

 したがって、何故、力と加速が関係しているのか、あるいは物質に対しては、質量とは何かについて理解できる。パソフは、加速に対する抵抗が物質の慣性を決めていて、それは電磁気的抵抗であることを説明している。

 まとめると、パソフの理論では、慣性効果は、高い周波数におけるゆがみによるものであるが、一方、重力効果は低い周波数の効果である。

 ルエーダ博士およびハイシ博士も、ニュートンの第2法則(F=ma)のリアクションフォースの明快な起源を発見する提案により、この分野に貢献している。第2法則は、従来伝統的に慣性に起因するものとされてきた。

 彼らの論文 (Physics Letters A 240, 1998, II 5-126) は、ZPE放射の加速依存性散乱(加速物体は動かされる)は、物体にローレンツ力を引き起こす標準的電気力学と相互作用するということを証明している。彼らの研究は、パソフを引用している。またNASAとの契約で支援されている。

 パソフによれば、加速状態におけるZPEフィールドのゆがみが慣性の原因である。ここで慣性は、方向の突然の変化に反応する我々の体の中の束縛電子から感ずるものである。たぶん、その反応を防ぐ方法があるであろう。おそらく、われわれは、実際すぐに方向を変えることが出来、素早く加速でき、そして宇宙空間ドライブに飛び立てるであろう。(中略)





3.13 大きな称賛

  



 確かにパソフのような印象的な理論的業績は注目されないわけにはいかない。フィリップ・ヤムは、“Exploiting Zero-Point Energy” (Scientific American, 12/97) において、その号の挨拶で決定的なものにしている。彼は、“真空中のエネルギーは…非常に真実である。”と認めているのである。

 またヤムは、“特に、ゼロポイントエナジーはハイゼンベルグの不確定性原理から出てきている。これは測定の正確さに制限を加えるものである。残余のエネルギーは、したがって、空の空間のなかに存在しなければならない。…真空エネルギーは粒子を作ることが可能であるにちがいない。それらは、不確定性原理によって決まる時間内で、一寸の間出現し消えさる。”

 NASAの新しいBPPRP(大躍進的な推力物理研究計画)のマーク・ミルズ博士も、上記の“発展段階の技術”について、いままでにいくつもの論文を寄稿している。たとえば、 “Challenge to Create the Space Drive” (J. Prop. & Power, V. 13, No. 5, 1997, p.577)が、その一つである。

 そこで、非対称変調器に対する彼の研究は、エネルギーが高密度であるがために、ZPE場(彼はZPFと呼ぶ)の“まだ手づかずの研究”を考えさせることとなった。

 ミルズ博士は、“電磁気学も、ZPFの点から見て宇宙空間飛行のための標的となる現象として示唆される。ZPFは電磁気的現象である。ZPFと非対称に反応する何らかの方法を発見すれば、それは宇宙間飛行を可能とするのではないだろうか”と述べている。

 さらに、彼は、“…これらの理論は、ブレイクスルーの推進物理学に対して、従来の研究に取って代わる新しい研究を提供している。”と結論付けている。おそらく、我々は、何でもZPE(明白な“元気”)のせいにすることによって新しい方向を開始できるだろう!

 ゼロポイントエナジーに関する興味深い理論物理の論文が、http://xxx.lanl.gov/abs/hep-th/9901011 からダウンロード可能である。

 最後に、プリンストンの先進研究所(アインシュタインが研究していたところ)のジョン・バーコール博士は、“我々は、全て量子揺らぎである。それが、我々の全ての起源であり、宇宙の全てである。”といっている。  



文献

[1]トーマス・バロン: インサイド・ゼロポイント・エナジー
[2]R.L.Forward: Extracting Electrical Energy From The Vacuum By Cohesion Of Charged Foliated Conductors
[3]US.Pat.5,590,031
[4]https://www.youtube.com/watch?v=46QNOJLflEY










4. パソフによるゼロポイントエナジーの端書き






 下記は、ニューズレター"Fusion Facts vol.3, No.3" に書かれたパソフによるゼロポイントエナジーの簡単な端書きの抜粋・概訳である。

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 真空ゼロポイントエナジーを抽出できる可能性が、学術文献において注目されてきた(著者の論文[1]および他の研究者達の論文[2,3])。

 この可能性に横たわる基本的原理は、近代量子力学の理論が、物質が無くても、空間の1立方センチメータあたり電磁気的ゼロポイントエナジーとして知られている、巨大な量の、まだ取り出して用いられていない電磁気的エネルギーを含んでいるということを予言していること(そのことは実験で証明されている)である。

 (ゼロポイントという形容詞の意味は、熱的効果が残っていない絶対温度0度においてさえ、そのような場の活動が存在するという意味である。)

 これに関するエネルギー量は(通常は観測されないが)、控え目に言っても、核エネルギー密度かそれ以上であると見積もられる[4]。著者が示したように、このエネルギー源は宇宙全体に分布している荷電粒子の揺らいでいる量子運動からくる放射にたどっていくことが出来る[5]。

 偏在するバックグラウンド・ゼロポイントエナジーについてのよく知られた物理的結論は、ラムシフト(この発見でラムはノーベル賞に輝いた)として知られる原子スペクトル線の摂動[6]、放射性崩壊に対する原子構造の安定性[7]、重力相互作用の基礎をなすフィールドメカニズム[8]、およびカシミア効果―密接に接近して置かれた金属板の間に働くユニークな吸引力(発見者カシミアの名がついている)[9]、を含んでいる。

 これらとその関連現象についてのセミポピュラーな解説は、文献[10]を見られたい。

カシミール効果

 非常に小さい距離を隔てて設置された二枚の平面金属板が真空中で互いに引き合う現象を、静的カシミール効果という。また、二枚の金属板を振動させると光子が生じる。これを動的カシミール効果という。
金属板どうしの距離が大きいと効果は極端に小さくなるが、距離が小さければ効果は測定可能な大きさとなる 。    出典:Wikipedia




 真空からエネルギーを抽出することに関して特に興味あることは、最後に述べた効果、いわゆるカシミア効果である。ロスアラモス国立研究所におけるミロンニ等によるエレガントな解析では、カシミア力、それは非常に近づけた金属プレートがいわゆる“何もない空間”により互いの方向に押されるということだが、これはプレートの存在により不均衡になった電磁気的ゼロポイントエナジーに由来する放射圧によるものである、ということである。

(訳註:Casimirはカージミーア; カシミア; カシミール; カシミル; カジミール; カジミル などと表記される。日本では、多分、カシミールと表記するのが優勢かもしれない。英語ではカッシミーアと聞こえ、'ミ'にアクセントがある。)

 この吸引力は、1/D4に比例する。ここで、Dは、プレート間の距離である。これは、1000Åかそれ以下のオーダーの間隙で非常に強くなる。吸引力は、十分に強いので、走査型トンネル顕微鏡のようなある技術的応用面において、非常に近接した金属表面が互いに引っ張られるのを防ぐ特別注意が必要になる。したがって、このゼロポイントエナジーの圧力は、単に学術的興味が強いだけでなく、圧力も全く強いのである。

 エネルギー抽出への応用の基本の形態においては、カシミア実験のプレートが、同じ符号の電荷(例えば、電子)で電気的にチャージされるということである。この反発力は、逆二乗則(1/D2)かそれ以下であって、幾何学的要素に依存する、いわゆる、プレート間のクーロン反発力という結果になるのである。

 しかしながら、間隙が小さい場合は、この反発力は、より強いカシミア力に圧倒される。このことから、全体的電荷分布は、プレートが集まると、集中する。結果として、カシミア効果を引き起こすゼロポイントエナジーは電荷分布が集中すると、電気エネルギーとして蓄積される。

 このエネルギーはいろんな方法で取り出すことができる。文献[2]の中には、例として、蓄積されたエネルギーがバッテリーを充電する方法が、原理的に示されている。真空からのエネルギー抽出が原理的に示されたといえ、文献2に提案された特殊な具体例が、連続的エネルギー発生には、かなり実用的ではないことを認めざるを得ない。

 これに代わって、真空ゆらぎからエネルギーを得る研究の候補としては、カシミアピンチ効果に基づく電荷集積で、冷たくて高密度の電荷プラズマの発生の中にあるかもしれない。この研究は、“カシミア-融合プロセスと呼べるであろう。……  

 もし、世界のエネルギー問題がゼロポイントエナジーを引き出すことにより解決できるかどうかに思いをめぐらしたいならば、モスクワのポドルニの下記コメントが特に説得力がある。

 “そのような応用を保証する信頼性がないからといって、有用な応用の可能性を否定するのは愚かなことだ”



文献[1-11]









5. フォウォードデバイスの思考実験、その他






 下記は、文献[1]のごく一部をかいつまんだ抜粋の概訳である。

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フォウォードデバイスの思考実験

  



 ゼロポイントエナジー捕獲の可能性に関する興味ががだんだん大きくなりつつある。そして、ゼロポイントエナジーで駆動する“オーバーユニテイ・デバイス”(動作に必要な入力エネルギーより大きな出力エネルギーを生み出す装置)が存在することを主張する多くの人たちがいる。

 これらの疑わしい主張にもかかわらず(今日まで、そのようなデバイスは厳しい、客観的テストをクリアしてはいない)、ゼロポイントエナジーを有用なエネルギーに変換する概念は、原理的に不可能というわけではない。

 ゼロポイントエナジーは、熱の蓄積器ではない。したがって、低い温度のエネルギー蓄積器からエネルギーを抽出することに対して熱力学的に禁止されることはない。

 1993年に、コールとパソフは、熱力学的分析“真空からのエネルギーと熱の抽出”について著した。その論文の中で、彼らは、“カシミア力を使った電磁気的ゼロポイント放射からエネルギーと熱を抽出すること”は、熱力学の法則を破ることなしに、原理的に可能である、と結論付けている[2]。

 カシミア力が原理的にいかに使えるかを簡単に示すデバイスに対する思考実験が、物理学者ロバート・フォウォードにより1984年に提案された[3]。

 “真空揺らぎバッテリー”が、積み重ねた伝導性のプレートで、作ることが出来るであろう。プレート全体に同極の電荷が加わると、プレート間に反発力を発生する。これは、プレートをくっつけるように押すカシミア力に逆作用する。カシミア力が支配的になるように静電気力を調整すると、プレートの間の電場にエネルギーを加える結果となる。これによって、ゼロポイントエナジーを電気エネルギーに変換する。

 カシミア力が二つのプレートを圧縮し、それで何かのレバーを動かすもっとシンプルなマイクロデバイスを想像することが出来る。……


ダークエナジー

  


ダークエナジー

 ダークエネルギー(暗黒エネルギー、英: dark energy )とは、現代宇宙論および天文学において、宇宙全体に浸透し、宇宙の拡張を加速していると考えられる仮説上のエネルギーである。2013年までに発表されたプランクの観測結果からは、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子等の通常の物質が4.9%、ダークマターが26.8%、ダークエネルギーが68.3%と算定されている。    出典:Wikipedia

 1990年代における宇宙物理学上の大きな発見は、Iaタイプの超新星のレッドシフトの観測から宇宙の膨張が加速されているという発見である。これは、ダークエナジーの概念に繋がっていった。ダークエナジーは、事実上、アインシュタインの宇宙定数の復活である。

 (宇宙は、現在、約70%のダークエナジー、25%のダーク物質および5%の通常の物質から成り立っているように見える。)

 ゼロポイントエナジーは膨張加速を説明する性質をもっている。したがって、ダークエナジーに不可欠な性質を持っているのであるが、しかし、120桁以上大きな、馬鹿げた大きさになってしまう。

 (以下略。必要に応じ原典[3]を読まれたい。)


等価原理

  


 もし我々の慣性に対する量子真空の研究が正しいならば、等価原理が即、発生する。慣性および重力質量は、逆の立場から見ると同じものである。2005年アナレン・デア・フィジークの論文で考察されたように、慣性質量は、物体が量子真空を通して加速するとき力として現われる。

 物体が、重力場に固定されているとき、重力の力(すなわち重さ)を発生させるのは物体を加速する量子真空である。というのは、量子真空のフォトンが、一般相対論において物体の存在における湾曲した測地線上を動くからである。

 したがって、慣性および重力質量は、まったく同じ方法で引き起こされる。このことから、両者は等しいことになる。それらは同一物なのである。

 この概念は、まだ推論的であるが、ゼロポイントエナジーは物質の最も基本的過程の何かに関係しているのかもしれない。

ゼロポイントエナジーを抽出することは可能か?

  


 ゼロポイントエナジーが有用なエネルギー源になり得るかどうかに関しては、大抵の科学者達は、極度に否定的である。それに、いままで提案されたデバイスが科学の主流でまじめに取り扱われたことはない。それにもかかわらず、ボーア軌道のSED(確率論的電気力学)の解釈はエネルギーが抽出できる可能性を示唆している。

 これに基づいて、一つのパテントが出ている(U.S.Patent 7,379,286) 。これは、コロラド大学で実験中である。(パテントは次節参照)




文献

[1]"U. S. Patent 7,379,286 &mdash Quantum Vacuum Energy Extraction &mdash Univ. of Colorado, Boulder"
[2]Extracting energy and heat from the vacuum D. C. Cole & H.E. Puthoff, Physical Review E, Vol. 48, No. 2, pp. 1562-1565 (1993).
[3]Extracting electrical energy from the vacuum by cohesion of charged foliated conductors R. L. Forward, Physical Review B, Vol. 30, No. 4, pp. 1700-1702 (1984).














6. 量子真空エネルギーの抽出―米国パテントNo.7,379,286






 この特許は、下記の文献[1]からダウンロード可能である。また、これは、 全文が翻訳 され公開されている。

 しかし、機械翻訳のため読みにくい。そこで、もう一寸分かり易い文にして抜粋・概訳であるが示しておく。この研究に入ろうとする場合は、原典[1]を詳細に読むと良いのではなかろうか。


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発明の名称“量子真空エネルギーの抽出”
US Pat.7,379,286


発明者:Bernard Haisch, Redwood City, CA (US); Garret Moddel, Boulder, CO (US)


要約:

 宇宙のどこにでも存在する電磁気的量子真空から、熱、電気、力学的運動の形態、あるいは、その他のパワーの形態での有用なエネルギーに、エネルギー変換するシステムを示す。

 電磁気的量子真空エネルギーを適切な周波数に抑えることによって、エネルギーの放出あるいは開放が得られる電子エネルギーレベルの変化が起こるだろう。電磁気的量子真空放射のモード抑制は、カシミアキャビティ(カシミア空洞)のなかで起こることが知られている。

 カシミアキャビティは、電磁気的モードが抑制または制限されているいかなる領域にもあてはまる。したがって、原子が適切な微小カシミアキャビティに入るとき、原子の中の電子の軌道エネルギーの減少が起こる。そのようなエネルギーは、本特許請求のデバイスで捕獲されるであろう。そうすると、すぐに、原子は、周囲環境の電磁気的量子真空よって再びエネルギーを得る。

 この方法で、エネルギーが局所的に引き出され、そして全宇宙の電磁気的量子真空により補充される。このプロセスは、何度も制限なく繰り返される。また、このプロセスは、全ての有用なエネルギーは、電磁量子真空のエネルギーを消費することによりエネルギーを抽出しているので、エネルギー保存則に整合している。

 同様な効果は、分子の結合に作用させて発生させることが出来るかもしれない。ガスが多数のカシミアキャビティを通して循環するデバイスについて述べる。ここに公開したデバイスは、大きさを変えることができ、小さなバッテリーから発電所サイズの発電機に置き換えて、出力を変えることができる。(特許請求項20件、図面7枚)

発明の概要:

 宇宙のどこにでも存在する電磁気的量子真空から、熱、電気、力学的運動の形態、あるいは、その他のパワーの形態での有用なエネルギーに、エネルギー変換するシステムを示す。

 これは、確率論的電気力学(SED)で予言された原子の電子軌道上の効果を用いて達成される。SED理論の文脈内において、原子の電子エネルギーレベルは、電磁気的量子真空からの放射エネルギーの吸収に対するラーマー放射のバランスによって決まることが予言されている。

 電磁気的量子真空エネルギーを適切な周波数に抑えることによって、エネルギーの放出あるいは開放が得られる電子エネルギーレベルの変化が起こるだろう。このエネルギーの変化は、(長時間スケールと、あるエネルギーレベルから他のレベルへの“ジャンプ”というより連続的な変化のときを除けば)、電子が励起状態から、より低いエネルギー状態に遷移するときの標準的フォトン放射に類似である。

 電磁気的量子真空放射のモード抑制は、カシミアキャビティ(カシミア空洞)のなかで起こることが知られている。カシミアキャビティは、電磁気的モードが抑制または制限されているいかなる領域にもあてはまる。原子が適切な微小カシミアキャビティに入るとき、原子の中の電子の軌道エネルギーの減少が起こる。その効果は外殻電子に対して最も顕著である。

 そのようなエネルギーは、本特許請求のデバイスで捕獲されるであろう。そうすると、すぐに、原子は、周囲環境の電磁気的量子真空よって再びエネルギーを得る。

 この方法で、エネルギーが局所的に引き出され、そして全宇宙の電磁気的量子真空により補充される。このプロセスは、何度も制限なく繰り返される。また、このプロセスは、全ての有用なエネルギーは、電磁量子真空のエネルギーを消費することによりエネルギーを抽出しているので、エネルギー保存則に整合している。

 本システムの二つの例を示す。これらは、マイクロ・カシミア・キャビティをガスが通る間に電磁気的量子真空エネルギーを抽出することを可能とし、自立運転でリサイクルモードで作動する。同様な効果は、分子の結合に作用させて発生させることが出来るかもしれない。

 ここに公開したデバイスは、大きさを変えることができ、小さなバッテリーから発電所サイズの発電機に置き換えて、出力を変えることができる。

 電磁気的量子真空は全宇宙に浸透しているので、電磁気的量子真空から、本特許請求した方法でパワーを引き出す本発明デバイスは、実質的に無尽蔵のエネルギー源となる。



 発明の背景

 マックス・プランクは、1912年にゼロポイントエナジーの概念を提案した。この考えは、1913年にアルバート・アインシュタインとオットー・シュターンにより研究された。1916年にウオルター・ネルンストは、宇宙はゼロポイントエナジーで満たされているということを提案した。確率論的電気力学の近代の分野は、この考えに基づいている。

 それと同時期においては、原子の構造と安定性は謎であった。原子のラザフォード模型は、太陽(核)の周りを周回する惑星(電子)の運動の類似性に基づいたものであった。しかしながら、これはふさわしいものではなかった。

 何故なら、軌道電子はラーマー放射をして、急速にそのエネルギーを失い、100京分の1秒より短い時間で核に向かって落下するであろう。だから、物質が安定であることが不可能になってしまう。

 いま、確率論的電気力学(SED)理論の範囲内で知られていることは、、ゼロポイントエナジーの吸収ということに関係しているというのが可能性のある答えである。

 1975年、ボイヤーは、最もシンプルな原子と原子状態である基底状態の水素原子は、ラーマー放射とゼロポイントエナジーの吸収との間で(古典的水素原子に対する適正な半径において)平衡状態にあることを示した。

 この解決は、1913年には知られていなかったので、ニールス・ボアは、別の異なる道をたどっていた。つまり、原子内の電子はとびとびの軌道しか取れないと仮定したのである。この考え方は、1920年代における量子力学の発展を促した。そして、古典的ゼロポイントエナジーの概念は、10年間忘れ去られてしまった。

 しかしながら、同じ概念が、1927年に、量子力学の文脈のなかに、ハイゼンベルグ不確定性原理の公式として、再びおのずと誕生してくることが分かった。その原理では、調和振動子の最小エネルギーは hf/2 という値を持っている。hはプランク定数で、f は周波数である。したがって、振動しているシステムからランダムエナジーの最後の量を取り除くことは、不可能である。

 電磁場も量子力学では量子化されるので、量子振動子の性質と電磁場の波動の性質には、類似性が導き出される。電磁場の可能なモードの最小エネルギー、それは周波数、伝播方向および偏光状態からなるのであるが、hf/2であると結論される。

 このエネルギーに全ての可能なモードを乗ずると電磁気的量子真空が立上り、これは、プランク、アインシュタイン、シュターンおよびネルンストにより10年前に研究された古典的ゼロポイントエナジーに同じ性質を持っている。

 古典物理学に古典ゼロポイントフィールドを加えた研究のラインが、1960年代に、トレバー・マーシャルおよびチモシー・ボイヤーにより再オープンした。これは、確率論的電気力学(SED)と名づけられた。SEDは、“どの量子特性、量子プロセスあるいは量子法則が、古典物理にゼロポイント電磁場を加えるだけで説明され得るのか”という疑問を呈した。

 初期の2つの成功は、(1)黒体スペクトルの古典的な(即ち、量子物理学を含まないもの)導出と、(2)ラーモア放射をするがゼロ点放射を吸収する水素原子における古典的な軌道上の電子が、古典的なボーア半径で平衡軌道を有することの発見であった。

 ティモシー・ボイヤーによるこの問題への初期のアプローチ(1975年)は、H.E.パソフによって完成された(1987年)。これらの解析は、軌道上の電子を調和振動子として取り扱った。……

 

詳細な説明:

 本発明の概念の第1実施例は、カシミアキャビティを用いているが、これを通して(または、これのなかに、または、これから)、ガスが流れる。これは、原子の大きさにおいて、伝導性の平行プレートに縛られた領域 あるいは、円筒の筒方向の長さが直径よりかなり大きい伝導性の物質の円筒として存在する。

 他の形態のカシミアキャビティが同様な効果を発生させることができる。また、カシミアキャビティという用語は、ゼロポイントフィールドのモード抑制が可能であるものということを意味している。

 必要な条件は、カシミアキャビティのモード抑制が、キャビティの外部に対する内部の電子エネルギーレベルに有意な差が起こるように、電子エネルギーレベルをマッチングさせることである。(以下略)





カシミアチャンネル

 この実施例は、Fig.1に示すが、12および14は二つの平行プレートで大きさは10x10cmである。各々の上に5000個の伝導体細片16を敷き詰めてある。これは幅10ミクロンで長さ10cmである。それぞれ10ミクロンの非伝導体細片で隔離してある。細片に垂直にスペーサ材料18を0.1-1cm間隔で高さ0.1ミクロンで蒸着する。プレートは面と面を向き合わせ、5000個のカシミア細片を形作るように並べる。10は伝導性細片である。

 もし、スペーサに平行で、細片に垂直に10cm/sのガス流速があると仮定すると、1.3X1020遷移/sという結果になる。

 
Fig.1 本発明に合わせた多数のカシミアキャビティを
含むチャンネル(複数) の一セットの図式イラスト。


 一つの遷移あたり1-10eVのエネルギー放出は、全カシミアキャビティに対し21-210ワットのエネルギーの放出となる。そのような層を10層あるいはそれ以上積み重ねたセットが、10x10x10cmの大きさのブロックに対して210-2100ワット発生するように製作できるであろう。

 これは、熱光電過程を用いて直接電気に変換、あるいは熱交換器を用いて間接的に変換できるであろう。前述の具体例のように、放出された放射を捕獲するひとつの手段は、装置をウォーターバスで囲むことである。

 上述の寸法は、単に例にすぎない。寸法は小さくも大きくも出来る。

Fig.2 本発明に合わせた量子真空エネルギーを局所的に有用なパワーに
変換するためのシステムの図式イラスト。


 Fig.2に示すエネルギー発生装置の本質的な要素は:
  1. 伝導性細片10による平行カシミアチャンネルの配列。
  2. トンネルを通るガスの連続的循環を供給するポンプ22。
  3. 放出されたエネルギーを捕獲するための手段24.
  4. 出力される熱を電気あるいは他の有用な形のパワーに変換できる熱的
    光電熱変換機または他のデバイス26.
である。28はガスパイプである。

 本システムの望ましい性質は、蓄積したエネルギーをローカル的に放射し、グローバル的に吸収するという性質である。したがって、驚くべきことに、放出されたエネルギーを捕獲するための手段24は、ガスによる量子真空エネルギーの捕獲を妨げることなしに、放出されたエネルギーを捕獲できる。

 この理由は、真空の場は全空間に浸透していてブロックされないという事実によるものである。手段24が量子真空エネルギーの捕獲を阻止しない二番目の理由は、吸収されたエネルギーは、手段24により吸収されない、より短波長の電磁的モードが支配的なことである。ところが、放射されたエネルギーは長い波長であり得るし、手段24は、この長い波長に対し大きい吸収係数をもっているのである。例えば、手段24がウォーターバスを含んでいるときの場合である。

 初めの二つの要素は密閉構造の中に閉じ込めてある。第3、第4の要素は本構造の内部または外部でよろしい。上記デバイスの変形としては、一対の頂部が次の一対の底部になるように積み重ねたプレートで構成される。



カシミアトンネル

 Fig.3に示す概念の一実施例は、複数の、平行な、直径0.1mmのカシミアトンネルである。……

Fig.3 本発明に合わせたカシミアキャビテイ(複数)
を含むトンネル(複数)のブロックの図式イラスト。


  残りの図Figs.4-8を見る。







文献

[1]Bernard Baisch and Garret Moddel: U.S.Patent 7,379,286











7. ダイオードを用いてゼロポイントエナジーを捕獲するプロジェクト




 下記は、 Zero Point Energy Diode Project の抜粋・概訳である。

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Zero Point Energy Diode Project


プロジェクトディレクター: トーマス・バロン、Phd, PE
Integrity Research Institute
5020 Sunnyside Avenue, Suite 209
Beltsville MD 20705
著者:バロン




序論

 ゼロポイントエナジー(ZPE)ダイオード・プロジェクトは、半導体接合部が、絶対温度0度の上の数μ°Kも含めて如何なる温度でも、ジョンソンノイズが測定されるという発見(2003)以来、IRI(Integrity Research Institute)におけるエキサイテイングな開発テーマである。

 この発見は、本プロジェクトディレクターによって、新しい再生可能なエネルギー源を得る目的で用いられてきた。上記の証拠は、数年間にわたり文献に現われていたとはいえ、おそらくチャールズ・ブラウンの12年前の特許US #3,890,161を除けば、誰もZPEを整流するために金属−金属ダイオードのアレイ(配列集合体)を作り、長期に耐える電源を作るという基本技術を明らかにする人はいなかった。……

 固体整流器を用いて電流を発生させることは、“熱イオン学”では普通のことである。しかしながら、異なる温度で異なる金属から電気を発生するゼーベックあるいは熱電効果は、非常に非効率である。

 クチェロフのパテントNo.6,946,596“トンネル効果エネルギー変換器”、およびヘイゲルシュタインのパテントNo.6,396,191“エネルギー変換のための熱ダイオード”のような最近のパテントは、一軒の家に供給する電力のために、少なくとも10℃の温度差と、6立方メートルの水が必要である。

 全国的な電力配線網は、古くなっていくので、修復するかスマートグリッドにアプグレイドするのに、10億の何百倍ものコストがかかってしまう。その代わりに、3次元配置にした形態のゼロポイントエナジー(ZPE)整流器の出現で、近い将来、1立方メートルの電力発生ユニットを各戸に備えることが現実味を帯びてくるかもしれない。……



要約

 ここでは、“ゼロバイアス”でDCの電気を発生するのに適したいろんなpn接合、およびいろんな整流器の基本的な自発的電圧について述べる。トンネルダイオードは、これに適ったクラスのダイオードである。マイクロ波ダイオードさえ、良い選択である。何故なら、その多くのものが、ゼロバイアスで作動するように設計されているからである(後述参照)。

 参考文献を付録として付けたが、これらは、量子雑音を作る電磁周波数(複数)を増幅するための“広帯域スパイラルアンテナ”および位相共役ミラーの使用について示している。ダイオード中を流れるトンネル電流も、10ガウス以下の磁場で影響を受ける。

 熱エネルギーを整流する最近の発見、“ブラウン冷蔵庫”あるいは“世界最小冷蔵庫”は、ZPEダイオードプロジェクトに対し、もう一つの追加すべき物であることを強調したい。

 
ZPEダイオード・アレイ(配列集合体)も、すべて、熱エネルギーを整流し冷却作用が起こる。


 地球温暖化の将来のシナリオでは、温度ゾ−ンにいる数千人が夏のあいだの熱衝撃でリスクに直面する。(2002年の2週間続いた熱波の間にフランスで2000人が死亡した。)したがって、電気と冷気を発生する1立方メートルの大きさの密閉したキューブは、二つの不可欠の目的に適うであろう。それは、また田舎や第三世界も住むのに適する地にするであろう。……



ZPE変換のために、ダイオードを使用することに対する考察(要約)

 ……さらに、電圧ゼロ(バイアスゼロ)でトンネル現象が起こることを示している査読付き論文がある(訳註:査読付き論文とは複数の専門家の審査に合格して学術誌に掲載された論文のこと)。また、下記の引用文献のなかの幾つかのマイクロ波ダイオードも、この性質を示す。

 しかしながら、あなたは、ノイズレベル(1/fノイズあるいはジョンソンノイズ)の存在はZPEの現われであることを認めなければならない。ダイオードのジョンソンノイズは、接合部それ自体から発生する。したがって、1方向への電気伝導を開始するのに最小の信号も要らないので、自然の性質が役立つのである。



実際の実験



 ZPE研究における最も重要なパテント“熱的電気雑音の整流”:チャールズ・ブラウンによるPat.No.3,890,161およびカパッソによるPat.No.4,704,622は、その機能に対しZPEを実際に認めている。カパッソはIBMの技術者であり、彼のデバイスは、プランクが1世紀前に発見し、コッホが実験室で検出(1982)したようなもののようにZPEが存在すると仮定してのみ作動することを示している。

 私は、ブラウンが示唆しているように、金属−金属ナノダイオードはミリポア(微小な孔あき)のシート集合体を使って、ZPEに対する一般的なものになるだろうという考えに傾いている。

 私は、また、ヤサモト等の研究(2004, Science, 304:1944) を挙げておく。これは、1nmの(接合の)ペプチド分子フォトダイオードである。これは、ゼロポイントエナジー研究のための分子的ツールの、分子レベルで示した、もうひとつの例である。

 然り。これらのダイオードは、疑いもなく、ZPEからのエネルギー発生を実質的に示している。実際、コッホが出版した文献によれば、簡単なコイルでも同様な効果が起こる。信じないですか? 私が挙げたパソフの右手の男エリック・デイビス博士と海外のクリスチアン・ベック教授の熱狂的活動をチェックされたい。

 両名とも、コッホがコイルの中には起こるはずもない電気的ノイズを慎重に観測したことを数年前に発表した複数の論文に、最後に気づいた。エリックは、2006STAIF会議(訳註:会議録は入手可能。Amazonなど検索されよ)において、この件を大きく取り扱っている。私も出席していた。彼は、私の勧めたダイオードテクノロジーの方向には進むことなしに、コッホの研究の再現研究にロッキードから研究費を得ることを試みていた (換言すれば、彼は商業的デバイスよりも純粋に学問的な方を好んだのである。)

 ベック教授は、実験室で測定可能なダークエナジーに関する論文を発表した後、ZPEに関する本を丁度書いたところである (Beck et al., 2004)。

 わたしは、また、ファブリジオ・ピント教授(Pinto, 1999)を挙げておく。彼は、ブラウンのパテントのようなものの中で、ZPEダイオードのような真空エンジンのアレイのエネルギー密度について理にかなった計算を行った。控えめに見積もって、1立方メートルあたり数百キロワットになった。

 下記は、私の本“Zero Point Energy: The Fuel of the Future”(上記第2節)の5章からの引用である。この本は、ゼロポイントダイオードをもっと詳細に説明している。



カスタムメイドのゼロポイントダイオード



 1994年に、スモリナーが、彼のチームが作製した1次元量子井戸に全く電圧をかけることなしに、共鳴電流が流れることを、初めて報告した。彼らは、ゼロポイントエナジーの代わりに“非調和振動”を用いた。彼らは、ゼロポイントエナジーを、それが各井戸の中の電子のトンネル現象のパワーを与えるとはいえ、“単純さ”のために無視した。

 下図は、ドイツの驚異的な業績を示している。ここで、電子は、最良の結果としてゼロバイアスを選んでいる。



 EMFエネルギーを整流する能力を示す他のダイオードとしては、ゼロバイアスで作動する(=外部電力を必要としない)“逆ダイオード”なる種類がある。(参考:US patent 6,635,907 "Type II Interband Heterostructure Backward Diodes" and also US patent 6,870,417 "Circuit for Loss-Less Diode Equivalent")

 これらは、二、三十年の間、マイクロ波の検出に使われたが、非熱的ゼロポイントエナジーの揺らぎの変換には試されたことはなかった。……HRL研究所の米国パテントNo.6,635,907は、非常に望ましい“ゼロバイアス付近でのI-V曲線の高度な非線形部分”について述べている。これらのダイオードは、ギガヘルツ領域のマイクロ波が存在するとき大きな電流を発生する。

 もう一つの例は東芝の米国パテントNo.5,930,133である。発明の名称は、"Rectifying device for achieving a high power efficiency." となっている。彼らは、逆方向モードにおいてトンネルダイオードを使っているので、“動かす電圧はゼロである”。

 (中略)



製品の応用




 太陽電池パネルのように、環境の熱を電気に変えることの出来る、単純に酸化亜鉛あるいはチタン酸化物フィルムを用いて燃料なしの電気自動車、航空機、および家庭に、電力供給する他のデバイス(複数)、これらは、数年間のあいだ信頼性高く動くことを示唆している報告がある。

 そのような固体ダイオードコンバータも、非熱的ZPEを捕獲する。したがって、宇宙空間において、太陽光がなくてさえ、砂嵐や夜の間、宇宙船および宇宙移住地のために働くことが可能である。最近のナノテクノロジーの発展により、熟考されたダイオードアレイが、30年前からの、例えばチャールズ・ブラウンのパテントNo.3,890,161に較べて、エネルギー損失なしにサイズをとても小さくすることができることを保証している。

 

 Fig.1. ブラウンのp-n接合ダイオードアレイ(38)の最新バージョン、および平行伝導体(39)を付け加えたバージョン(Kuriyama, A., Miyata, H., Otto, A., Ogawa, M., Okura, H., Fukutani, K., and Den, T., “Method for Manufacturing a Semiconductor Device”, U.S. Patent 7,183,127, Feb. 27, 2007, Fig. 4D and 4E).(訳註:このPat,No.には、誤りがあるかもしれない)



 ブラウンは、金属−金属ダイオードは、おそらくミリポアシートを用いてZPEに対する人気商品になるだろうということを示唆している。ブラウンは、1975年に発明をパテントにしたのであるが、彼のアイデアは、クリヤマの“Method for Manufacturing a Semiconductor Device” US Patent #7,183,127(訳註:このPat,No.には、誤りがあるあるかもしれない)により、生き返り、若返った。このパテントは、ブラウンのパテントなどの、p-n接合の構造に対し類似の円筒型細孔を引用している。

 クリヤマの各円筒型ダイオードの直径の望ましい範囲は、1nmより小さくはなく、また10nmより大きくはないので、ブラウンの場合より一桁小さいということは勇気づけられる。

 加えて、ナノホール(ナノサイズの孔)およびナノワイヤ製造技術、とくにp-nあるいはp-i-n接合に関して、幾つかの参考文献が挙げられている。Al-Siナノ構造の典型的な例としては、円筒の平均直径 3nmで各円筒間スペーシング7nm、円筒長さ200nmを達成している。

 またクリヤマは、これらの寸法は、シリコンの代わりにゲルマニウムを使って、同様に成り立つと記している。彼は、また、ダイオードアレイの頂部と底部の電極の重要なオプション、あるいは底部の共通伝導体に対して電気伝導性物質を付けている。

 実用的な例としてクリヤマが言う最小の直径は、Fig.1に示すように、1nmの幅の円筒である。これは1000nm平方の半導体ダイズ(さいころ)の中で、ダイオード(複数)間に3nmのスペーシングで離してある。これは、1cm2あたり約1012個のダイオードとなる。それは、ダイオード密度1011/cm2を有するInAsドットALMBE(原子層分子ビームエピタキシ)で成長させた自己集積量子ドットGaAsショットキダイオードのレベルである(Hastas, 2003)。

 

 Fig.2. FET入力アンプに対する典型的入力ノイズのルートパワースペクトルのプロット(Northrop, 1997)





製品の記述


 ダイオードと抵抗の最も興味深いアレイは、便利な10cm3であろう。もしダイオードを詰める密度が必要なら、もっと大きくすることも出来るだろう。提案されているDEACボックスは、おそらく1) Hastasの自己集積型GaAsショットキダイオード、 あるいは、 2) クリヤマの高密度ナノサイズ円筒型ダイーオードから選ぶことになるだろう。両者ともに、ダイオード密度は1011/cm2の大きさになると見積もられる。

 控えめに言って1層あたり2mmのパッキング密度なら、我々は1ccのなかに五つのダイオードアレイ層を詰めることが出来る。したがって10ccでは5,000個のダイオード層となる。これは、10ccの箱内に、5×1014個のダイオードとなる。

 これは、1個のダイオードに対して見積もられるピコワット(1-10pW)に対して望ましいパワーレベルである。したがって、最低の値1pW/diodeでも、熱的および非熱的の両方あわせて最低でも500ワットの直流発電機となる。……



参考文献:












8. ブラウンのパテント:ダイオードアレイ




 下記は、 USパテントNo.3,890,161 の抜粋・概訳である。

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USpat.3890161 - ダイオードアレイ(Diode array)



発明者: チャールズ M. ブラウン III
(Charles M. Brown, III) (Calif.USA)




発明の背景と要約

 物質中の熱の様相は、ジョンソンノイズとして知られている熱的に興奮した電気的雑音である。熱的興奮は、無限時間、電荷や電流のランダムな運動を発生させる。回路においては、雑音源のパワーは、P = 4KT冉 である。ここで、K はボルツマン定数、T は雑音が発生する回路の絶対温度、 は定義されたバンド幅である。

 この式は、雑音源のパワーを示しているが、雑音源の内部抵抗によって、引き出せる最大のパワーは1/4だけで、P = KT冉 である(Fink, D. G. Radar Engineering, pp. 130-13], (Ist Ed.), McGraw-Hill)。

 ジョンソノイズは、外部信号のように振る舞い、仕分けすることが出来る。すなわち、ダイオードにより選択的に一方向に伝えることが出来る。回路中の電荷や電流はランダムな動きをしているので、両方向的な動きである。したがって整流回路により得られる最大のパワーは(1/2)KT冉である。ここで、内部抵抗は外部負荷にマッチングしてある。

 式の許容値は、(1/2)KT冉eという形で与えられる整流不完全性に対して発生する。ここで、eは効率である。アレイの中で平行配置の、複数の整流したノイズ源が、分極した出力電流(累積的)を発生する。

 したがって、アレイのなかでノイズ源から得られる整流したトータルパワーは、式P=(1/2)KT冉Neで表すことができる。ここで、N はアレイ中の整流されたノイズ源である。おおまかに言って、本発明は、直流出力を発生する内部ノイズ源をもつ多数のダイオードを結合したことから成り立っている。

 これは、広帯域の高感度低キャパシタンスダイオードを複数結合することによって達成できる。このカテゴリーに属するダイオードとしては、複数の冷陰極のアノード真空管がある。しかしながら、意味のある出力を発生するためには数百万のダイオードを含むアレイの方が望ましい。

 技術的には互いに関係していない二つの製品があるのだが、これらに関する最近の開発を結びつけると、十分短いレスポンスタイムを有し広帯域のダイオードの製作が可能となる。これは実現可能な方法なので、この方法でパワーの発生を引き起こすのに十分大きな数のダイオードを配置出来るのである。この方法では、パワーの発生と共に、動作結果として、熱吸収により冷却作用も発生する。

 この二つの開発は、超濾過スクリーン膜と金属-金属ダイオード(metal-metal diode)より構成される。超濾過スクリーン膜は、揮発性および非揮発性プラステイックの混合から出来ているが、このプラステイックは、一様な小さな円筒形細孔を碁盤目状に形成している。

 (訳註:金属-金属ダイオード(metal-metal diode)とは、Metal-Insulator-Metal (MIM) ダイオード、あるいは、 Metal-Oxide-Metal (MOM)ダイオード、あるいは トンネルダイオードであると思われる。これは高速動作し、その動作メカニズムは量子トンネル効果あるいは熱刺激により支配されている。1970年にブリンクマン等が初めて、ゼロバイアスのMIMトンネルダイオードが十分大きく応答することを実証した。)

 これらの膜は、250Åの細孔で、50Åの壁、および100μmの厚みに作ることが出来る。金属-金属ダイオードは、控えめに見積もっても、1012Hzまで整流することが出来る。

 ダイオード材料を電気メッキで膜中の細孔のなかに、各細孔が絶縁しているように、ダイオードアレイを作れば、1立方メートルあたり数ワットの電力を発生することが出来る結合体を形成できる。





図面および、その簡単な説明



Fig.1. 望ましいダイオードアレイの一部分の、一部切欠した斜視図




Fig.2. ダイオードアレイの代わりの実施例の断面図


Fig.3. ダイオードアレイの代わりの実施例の断面図


Fig.4. ダイオードアレイの代わりの実施例の断面図


Fig.5. 直列接続した複数のダイオードアレイの電気的な図


Fig.6. 直列接続した複数の離したダイオードアレイの斜視図


Fig.7. 直列接続した複数の薄層を重ねたダイオードアレイの斜視図






望ましい実施例の詳細な説明

 Fig.1に、ダイオードアレイ10の望ましい実施例の薄層の構造を示した。薄層に使う主な要素は、超濾過膜であって、これは、二種類のプラスチックを混ぜて膜に形成してある。一つのプラスチックにおいては、分子は安定であるが、もう一つのプラスチックは比較的揮発性である。しかし安定化できる。

 膜の中の細孔14の形成は、揮発性プラスチックの分子を、膜の中に望みのサイズの細孔が形成されるまで揮発させることによってなされる。このプロセスで、直径250Åの均一な円筒型細孔が形成され得る。超濾過幕はミリポアコーポレイションによって商業生産されている。

 溶液の中で電気メッキすることによって、細孔はニッケル金属16で満たされる。膜12の片側にニッケル金属が、膜の全表面に渡って一様な層18を形成する。細孔の中のニッケル金属は、他の膜の表面と同じ高さに作られる。

 このことについて、ある程度誇張した形状が、膜12の断面で示してある。金属-金属ダイオードを形成するために、頂点面20が、それぞれ隔離したニッケル充満の細孔と相互作用するタングステン酸化物を有する薄いタングステン層22でラミネートしてある。

 (以下略)










9. 発明者ブラウンのその後など




 下記は、 Charles M. Brown's Thermal Electric Chipの抜粋・概訳である。これは、発明者ブラウンがPeswikiに投稿した内容である。

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 ”私は、US パテント3,890,161、「熱を吸収して電気を発生するチップ」、を提案している。この発明は、マイクロチップに埋め込んだ、平行に一様に整列した多くの非常に小さなダイオードのアレイから構成されている。1cm3あたり、100,000,000,000個のダイオードの設計では、技術の成熟段階では、約100Wの電力を発生するだろう。”―チャールズ・M・ブラウン

 コンタクト: Charles M. Brown
4264 Ala Muku Pl. C-3
Kilauea Kauai Hawaii 96754
phone: 808-828-0297

Sep.2,2000投稿



 クリーンで、豊富にあり、地方分散的である新しいエネルギー源を提案させて下さい。私は、US パテント3,890,161、「熱を吸収して電気を発生するチップ」を提案します。

 この発明は、マイクロチップに埋め込んだ、平行に一様に整列した多くの非常に小さなダイオードのアレイから構成されている。(中略)

 5,600個の2.3μmのダイオードで作られたチップを購入し、専門家の研究所で委託試験を行った。チップの性能は熱力学的閾値を超えていたので、これは実現可能性を示していた。しかし、実用レベルではなかった。(中略)

 (訳註:ここで熱力学的閾値を超えていたという意味は、ZPEを捕獲しているということを主張しているものと思われる。)

 私は、ダイオードアレイを、共同で、広く、透明で、低利益で、妨害のない、人々の世界的ネットワークで開発され、応用されることを望んでいる。

 
Aloha, Charles M. Brown


August 31, 2004投稿



 
C60(典拠:Wikipedia)


 私は、ピュア・エナジー・システムと研究することを嬉しく思います。 ナノラボ は、プロトタイプを製作しています。設計は、サッカーボールC60を用いて改良されています。ナノラボは、他の人が参加することを拒んでいません。彼らの努力に感謝したい。







Feb. 19, 2007 A投稿



 …ダイオードアレイは、熱が高温から低温へ流れるときに必要となる温度差なしに、環境の熱を電気エネルギーに変換する。熱は、ランダムな電子の動きの状態にあるのだが、電子は選択的に順方向に通過する動きおよびブロックされる逆方向の選択的動きに、受動的に振り分けられる。

 したがって、マックスウェルの悪魔の別形、スモルチョフスキーのトラップドアが電子に適用され、文字通りトラップドアとして働く。ここでは、非常に小さいダイオードが、電子に対しスモルチョフスキーのトラップドアとして用いられるのである。
マクスウェルの悪魔

 マクスウェルの悪魔とは、1867年ごろ、スコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが提唱した思考実験、ないしその実験で想定される架空の、働く存在である。 分子の動きを観察できる架空の悪魔を想定することによって、熱力学第二法則で禁じられたエントロピーの減少が可能であるとした。 熱力学の根幹に突き付けられたこの難問は1980年代に入ってようやく一応の解決を見た。
          出典:Wikipedia


 ダイオードアレイの中に、多くの小ダイオードが平行に並列して作られているので、選択されて発生した電子の正味の流れは、各ダイオードで整流された熱的運動を、数多くのダイオードにより、低電圧の大きな流れのDCの高電流の電力として集積される。電力が発生すると、同じ程度の冷却の発生が密接に関係してくる。

 ランダム運動を仕分ける(整流する)のに必要なパワーは、ランダムな熱的パワーにより供給される電力より小さい。(中略)

 本概念は、1993年に部分的にテストされたが、〜2ナノワット、すなわち、一個のダイオードがインピーダンスマッチングした負荷に供給できる電力、1/2kTBワット、より多い電力が、n型基板の上にSiO2で囲まれた〜5,600個の直径2.3μのAuドットアノードからなるチップから、得られている。ここで、1/2は整流を意味する。またkはボルツマン定数で1.38x10-23、Tはケルビン温度で〜300、Bはバンド幅で〜1THz、熱雑音の上限周波数である。

 チップは、不活性オイルの攪拌で均一温度にした浴槽を含む専門的テスト条件で、負荷50kΩに〜50mV(基板がプラス)で〜50ナノワット発生し、実現可能性を示した。ナノワットレベルの冷却テストは行わなかった。残念なことだが、このテストの文書は、テスト結果の1頁に限られている。
悪魔か鬼才か?

 Demon(ディモン)は、日本では悪魔と翻訳されているが、原語のDemonという語には、日本語の悪魔とはニュアンスがが異なっていて、超人的精力家,名人,鬼才,非凡な人,という意味もある。日本語の悪魔という語には、そんな意味合いは無く、悪神、魔物などの悪者のイメージが付きまとう。



 これに類似の実験か、あるいはもっと良い実験で、この実験結果を確認して欲しい。…

 私は、熱力学第二法則、すなわち強く信じられている物理法則、に関するアイザック・アシモフの著作を暇時間に読んだ後、この革命的物理の探求を40年前に始めた。アシモフ博士の素晴らしい著作は、第二法則は、ナノテクノロジーで駄目になることを信じさせてくれた。

 熱力学第二法則は、出来ると考えれる事柄に対し非常に不経済な制限を与えている。熱力学第二法則は、ナノスケールでは成り立たないという新仮説は、科学の疑問である。これは、科学界でオープンに、鋭意、テストされるべきである。…

 さらにいっそう実用的であるダイオードアレイの形態は、n型InSb(高性能半導体)の基板の上に短い垂直な直径約2nmのカーボンナノチューブの陽極を約30nmの間隔だけ離してナノテクノロジで製作することである。50%の効率で1011diodes/cm2になり、エネルギー密度は〜100ワット/cm2となる。

 …私は、ダイオードアレイあるいはその応用に関してうるさいライセンス制限なしに、したがって全ての人類が相互作用的開発に参加でき、これが商業化されることを望んでいる。(以下略)

(参考) Science Discussion Web Forum





 ブラウンのダイオードアレイの感想

 ここで、ブラウンのダイオードアレイの問題点などについて考察してみる。これは、単なる私の個人的感想にすぎない。読者は読者みずから判断されるだろう。

  1. 上述の状況をみると、デバイスの製作はナノテクノロジーを要することもあって、実現するのは、かなり困難かもしれない。

  2. 学術論文(あるいは詳細な実験報告)が待たれる。たとえば、“5,600個の2.3μmのダイオードで作られたチップを購入し、専門家の研究所で委託試験を行った。チップの性能は熱力学的閾値を超えていたので、これは実現可能性を示していた。”と記述しているが、これに関する詳細報告である。

  3. ブラウンは、マックスウェルの悪魔に言及し、ダイオードが悪魔的に働いているとしている。その根拠の説明を詳細に示した方がよい。これに関連して、電力を発生し、冷却していくとしているが、熱力学第二法則の破れのメカニズムの詳しい説明が要るのではないか。しかし、学術論文や説明がなくても、実際に作動する現物を提示できればよいとは思う。 

  4. 読者が、日本特許庁に申請するときは、熱力学第二法則の破れをあからさまに記したら、審査に合格しないだろうから、充分注意されたい。

  5. VIII章4節のヒノ教授の論文を見られたい。抵抗負荷をかけて電力をとりだすと、デバイスの温度が低下する現象を研究し、科学的論文手法で克明に記述し、著名な学術誌にきびしい査読を経て掲載されている(惜しむらくは、日本語で書かれている。世界からは無視されるという損失が起こる)。ブラウンの発明については、このような学術論文が必要である。

  6. ブラウンのデバイスを製作するのには、ナノテクノロジーが必要であるので、一般人が取り組むのは、設備やコストの点を考えても困難である。後節のターターのZPE発電機なら、一般人にも取り組めそうである。













10. マックスウェルの悪魔の研究





 ここで紹介する研究は、得られた電力は、微々たる物で実用レベルに達してはいないが、学問的には極めて重要な話題である。特に、磁場にマックスウェルの悪魔の働きをさせるという概念は興味深いところである。もちろん将来の検証が必要である。

 

 10.1 真空管の中の悪魔の研究(フー・シンヨン、中国)



 これは、ヤフー研究グループ[1]に投稿されたマックスウェルの悪魔に関するフー・シンヨンの手紙の抜粋・概訳である。




 拝啓

 チャールズ・ブラウン(ダイオード・フリーエナジー研究者)様
 および他の全ての友人様


 数年前に、多分覚えておられるでしょうが、私達は二つの異なる仕事関数によって、熱-電気変換が起こることを発見したようだ、と私は言いました。私達は二つのAg-O-Csエミッタを使いました。これらの熱電子放出能力には少し違いがあります。

 私達の二つの真空管に現象が起こりました。信号はどちらかといえば弱く、測定値は不安定でした。これは、大学生のときに学んだ従来の理論では説明できませんでした。

 とにかくも、その当時は、そんな奇妙な考えを容認することは出来ないと思いました。数週間後に、私達は、その現象を上手く再現できなくなりました。そのため、だんだん、その問題から離れ、その研究を進めるのをやめてしまいました。

 ところが、私達は、最近になって、マックスウェルの悪魔実験を進めたときに、その現象に何度も何度も遭遇したのです。昨年の夏、私達は、この問題に対して真剣な研究をすることに決心しました。

 私達は、二つの相異なる材料、特にAg-O-CsエミッターMo-O-Csエミッターをテストしてみました。驚くべきことに、現象は明白であり、安定していたのです。さらに多くの真空管を用いてのテストを繰り返し繰り返し行いました。そして最終的に、信頼できるという結論に達しました。私達の期待以上のものでした。

 私は、以前の考えを変更しなくてはならない、と思いました。添付の論文に、二つの真空管、FX12-90 および FX12-29に関するテストの詳細を記しました。

 親愛なるチャールズ様、北京に住んでいたシュー・イエリンという名前の中国人をご存知ですか。彼は、あなたのように、結晶ダイオードを用いてそのようなH-E変換(熱-電気変換)を実現しようと偉大な努力をしたのです。

 かれは、一度成功したと言っていました。彼のいた研究所は、彼の研究を数年間支援しましたが、伝統的学問分野からの猛烈な圧力で支援は打ち切られました。悲しいことに、シューは、2005年になくなりました。詳しいことは知りませんが、おそらく、悲惨な状況のなかで亡くなったと思います。私は、それ以来、シューとコンタクトを取っていません。本当に、すごく悲しいことだと思います。

 私は、過去においては、彼の考えが正しいなんて本当に思っていませんでした。また、チャールズ・ブラウンの考えも、本当に親切で愛される友人だと感じていたとはいえ、正しいかどうか知りませんでした。

 しかし、私自身の実験結果に直面して、以前の私の考えを疑い始めています。そして、この問題に関しては、おそらく、シューやチャールズやその他の人たちも正しい、と思っています。

 いまのところ、私自身の実験で急がしすぎる状態ですが、将来、十分なお金と時間があれば、結晶ダイオードによるエネルギー変換を研究する機会があることを願っています。

 多分、私はそのような研究をはじめるのに年を取りすぎていると思います(今76歳です)。

 あなたのご研究はいかがでしょうか。あなたから大きなよいニュースを聞くことを切に望んでいます。私達は、協調関係にあります。

 それでは、アローハ
 フー・シンヨン  




 添付ファイルが二つありますので、興味があればE-mailしてください。送ります。

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  (訳註:上記に続いて、断片的メモ状の記述が付記されているが、実験方法の図・結果が不明なので、理解しにくい面があるだろうが、とりあえず、以下、抜粋・概訳しておく)

 …テストしたデバイスは、低い仕事関数の特別な金属を使った真空管(複数)です。その第一はAg-O-Csであり、第二は Mo-O-Csです。仕事関数の差によって真空管に電流が流れ、したがって外部回路に電流が流れます。

 観察された現象は、標準的高精度試験装置、Keithley 6514プログラマブル・エレクトロメータを用いて行い、電気の流れが室温において維持されたということです。

Keithley 6514プログラマブル・エレクトロメータ




 電流は周囲の環境の熱的活動により供給されるという仮定です。環境から引き出される熱エネルギーは電流に変換されます。環境からエネルギーを引き出す材料の自己冷却を示すであろう温度の測定については述べておりません。

 この変換プロセスは、他の熱-電流変換プロセスとは基本的に異なっています。何故なら、他の熱ー電流変換は、動作するのに熱勾配が必要になるからです。フー・シンヨンのデバイスは、明らかに、熱勾配を必要としません。

 材料Ag-O-Csは、室温における熱イオン作用により電子を放出します(暗電流というのは、これを含む光電管の規格です)。もちろん、室温より高ければもっと多くの電子を放出し、低ければ、より少ない電子を放出します。……





文献:

[1] ヤフー研究グループ




以下、上記投稿に対するジェルマーニョ・ダブラーモ(イタリア)からのレスポンスの抜粋・概訳を示す。



拝啓

 フー・シンヨン様、全ての皆様

 あなたの最終結果を見て、私はとても幸せな気持ちになりました。私は、2008年以来、その構造(とその背後にある理論)について研究しています。

 私は、このテーマに関する幾つかの論文を学術誌に掲載しました。あなたの新結果は、私が書いたことに一致していると思われます。おそらく、あなた方の中には、私の理論的業績と、それを批評することに興味をもつ方がおられるでしょう。下記は、私の拙論ですが、お読みくださればと、思います(すべてフリーでダウンロード可能)。

  1. 真空管中の悪魔(エントロピー・ジャーナル):The Demon in a Vacuum Tube (Entropy Journal)http://www.mdpi.com/1099-4300/15/5/1916

  2. 熱荷電キャパシターと熱力学第二法則:Thermo-charged capacitors and the Second Law of Thermodynamics (Physics Letters A)http://arxiv.org/abs/0904.3188

  3. 熱荷電キャパシターの利用可能性について:On the exploitability of thermo-charged capacitors (Physica A)http://arxiv.org/abs/0912.4818

  4. “熱荷電キャパシターの利用可能性について”の補遺:Addendum to "On the exploitability of thermo-charged capacitors'' [Physica A 390 (2011) 482-491] (Physica A)

  5. 熱荷電キャパシターの閉回路解析:"Closed-loop" analysis of a thermo-charged capacitorhttp://arxiv.org/abs/1407.6627

  6. 熱力学第二法則の特異状態およびその破れの探索:The Peculiar Status of the Second Law of Thermodynamics and the Quest for its Violation (Studies in History and Philosophy of Modern Physics) http://arxiv.org/abs/1101.5056


    敬具
    ジェルマーニョ・ダブラーモ







10.2 フー & フーの磁場を用いたマックスウェル悪魔実験



 近年行われた二件のマックスウェル悪魔実験が論文“真空管中の悪魔”(エントロピー・ジャーナル)の中に紹介されている。以下は、その一つの抜粋・概訳である。(詳細情報が入手できたとき、もう少し詳細が紹介できると思う)

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 近年、興味深い実験が動き始め、実際に遂行された。いわゆるマックスウェルの悪魔の実験である。この実験は、外部磁場により曲げられた熱イオン放出電子が用いられている。

 フー & フーによりなされた実験のデバイスは、光電陰極Ag-O-Csで被覆した二つの類似のプレート(殆ど同じ仕事関数、ΦAΦB)からなっていて、これらは、室温で、真空管の中に並べて置かれ、互いに電気的に絶縁してあった(下図参照)。



フー&フーの真空管中の二つの類似電極の側面スケッチ図[1]
(a)磁場なしの空間に射出された電子、     (b)磁場中に射出された電子


 真空管は、永久磁石で発生させた静的一様な磁場の中に置いた。実験の間、磁石は遠方(B 〜0)から、だんだん真空管の方に向かって近づけた(真空管は、銅のボックスで、電磁波と外部電場からシールドした)。マグネットが動いている間は、外部磁場は静的ではなく、このため誘導電流が発生するかもしれない。

 論文からは、適切な緩和時間をとってから測定したかどうかは明らかではない。著者フー&フーによれば、外部磁場は悪魔の役割を演じ、さもなくば対称的であるべき電子の流れを選択的に電極の一つの方向に曲げ、このことから電圧降下(真空管の電極が負荷により閉じられていれば電流)を引き起こす。

 著者等は、10-14Aのレベルの極大電流と、10-4Vの電圧降下を観測したと主張している。



文献

[1]Fu, X.; Fu, Z. Realization of Maxwell’s hypothesis. 2012, arXiv:physics/0311104 [physics.gen- ph].



10.3 パーミノフ & ニクロフの磁場を用いたマックスウェル悪魔実験



 これは、文献[1]の概要である。上述のフー&フーの記述と興味深い類似性が見られる。デバイスは、下図Fig.1のとおりである。パーミノフ & ニクロフは明らかに異なる仕事関数をもつ二つの電極を、誘電体絶縁面で離して使用した。

 装置は、真空容器の中に入れ、約100℃の一様な温度に維持した。また、この場合、静的な外部磁場を与えた。誘電体表面に平行な直線的伝導体内に定常電流が流れた。磁場が悪魔として働くと推定され、熱イオン的に射出された電子を低い仕事関数の電極から高い仕事関数の電極の方向へ押し、こうして、電極の接触電位差に打ち勝つ(下図Fig.1参照)。



Fig.1 パーミノフ & ニクロフのデバイスの動作原理[1]

誘電体表面上の磁場の中で荷電粒子の直接的平衡作用のために作られた電位差は陰極
金属と陽極金属の間の接触電位差、VeqΦa-Φcを超えることが出来る。
したがって、平衡状態において負荷を含む電気回路にDCの流れの発生が可能となる。


 実際、殆ど全ての教科書[2]においては、相異なる仕事関数、それぞれΦAおよびΦB (ΦAΦB)をもっている二つの材料を、その一端でつなぐと、V = (ΦA-ΦB)/eに等しい電圧降下が、接合面間(コンタクト電位)ばかりでなく、瞬時に材料の自由端(下図Fig.2参照)の間に発生する。そこでは電荷も蓄積されるが、接触面とは逆電荷になる。

Fig.2 真空中における二つの材料A,Bをつないだ回路[2]

Fig.2は金属-金属および金属-半導体の接合に対して成り立つ。仕事関数は
ΦAΦB、J-Iは物理的接合、J-IIはギャップ(自由端)である。


 それらの教科書においては、そのような電圧降下は真空間隙における熱イオン的射出によって発生しているということを意図してはいないことに注意されたい。言われているところでは、一端における物理的接合(Fig.2のJ-I)の結果として即座に形成されるという。

 この電圧降下は、ギャップ中の熱イオン的射出電子を低仕事関数の自由電極表面から高仕事関数電極表面に自然に動いていくことを防ぐであろう。

 フー&フーの実験においてさえ、二つの電極はΦAΦBとなることはありえない。したがって、ΦAΦBあるいはΦAΦBと仮定しなくてはならない。なぜなら、Ag-O-Csのコーティングは、銀層の上にセシウム蒸着と酸化で真空管内部に直接製作されるからである。

 そのようなプロセスでは、正確にΦAΦBであること保証はできないのである。ということは、フー&フーの試供真空管の内部で、電圧降下V = (ΦB-ΦA)/e (あるいはV = (ΦA-ΦB)/e )が、電極の自由表面間に発生し、熱イオン的電子に対し電圧障壁になる。

 したがって、両者の実験では、外部からの磁場が、電子を電圧障壁を乗り越えさせるのを助けているように見えるのである。

 パーミノフ & ニクロフによる実験は、Fig.1に示す材料では行われなかった。彼らは、二つの等しいタングステン電極(したがって、ΦAΦB)を用いた。そして、どんな場合でも、10-7A(回路抵抗1MΩ)のレベルの電流を測定したと主張した。また彼らは、そのような電流は、トムソン効果あるいはゼーベック効果によるものではないと断言している。





文献

[1]Perminov, A.; Nikulov, A. Transformation of Thermal Energy into Electric Energy via Thermionic Emission of Electrons from Dielectric Surfaces in Magnetic Fields. In Second Law of Thermodynamics: Status and Challenges; Sheehan, D., Ed.; American Institute of Physics: San Diego, CA, USA, 2011; Volume 1411, pp. 82?100.

[2]Klein, U.; Vollmann, W.; Abatti, P.J. Contact potential differences measurements: Short history and experimental setup for classroom demonstration. IEEE Trans. Educ. 2003, 46, 338?344.



10.4 フー & フーおよびパーミノフ & ニクロフの実験の弱点



 ジェルマーニョ・ダブラーモ は、上記のフー & フーおよびパーミノフ & ニクロフの研究には、問題点があることを指摘して、詳しい考察を行っている。長文なので一部のみ抜粋・概訳して紹介するが、詳しくは、ぜひジェルマーニョ・ダブラーモ著“真空管中の悪魔”[1]の全文を読まれたい。

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 私(ジェルマーニョ・ダブラーモ)は思うに、上記のフー & フーおよびパーミノフ & ニクロフの研究には、その実験を傷つけるような、少なくとも一つの弱点がある。それは、実験・測定面でなくても、少なくても理論のモデリングの面である。要点は、一様な磁場は仕事をしないということである。

 ローレンツ力 F = -ev x B (-eは電子の電荷)は、定義により、仕事をすることは出来ない。だから、自由電極間の相互電位差(接触電位差)に打ち勝つ原因ではありえない。実際、

dW = dx・F = -edtV・(v x B) = 0             (1)


となる。これは、各ベクトル a およびcに対してa・(a x c) = 0となるからである。

 もし、厳密にΦAΦBであったとしても、静磁場は、電圧降下とデバイスの端子間に電流を発生させことは不可能だろう。例えば、フー&フーの実験において、真空管は空間電荷の平衡状態に最終的に落ち着く閉空間である。磁場がなければ、電子は、共にAg-O-Csコーテイング層により射出および吸収され、定常的平衡状態に落ち着く(空間電荷も然り)。真空管のガラス容器は、電子の閉じ込めに貢献している(Fig.1参照)。

Fig.1 フー & フーの実験におけるΦAΦBのケース[1]

矢印は、真空管内における定常的平衡状態にある電子を表している。平衡
を破るために、B が、“飛行”電子を一つの側から他の側へと押すと仮定され
ている。しかし、これには仕事が必要であるが、静的なB は、仕事をすることは
出来ない(式(1)参照)。


 静磁場は、各電子が、コーテイング層とガラスの間で行ったり来たりする運動の軌道を変化させることしかできない。しかし、全体的熱平衡は保たれている。そして、磁場は、試料のターミナル間で電圧降下と電流を作ることはできない(外部からの仕事が必要だろう)。

 もし、定常的な電子の動きを、二つの等しくて対立する(補償する)電流として考えるのならば、二つの等しくて対立する電流(すなわち電流は合計でゼロである)が流れている伝導体の内部で、静磁場がホール効果の発生を可能とする、と主張するようなものである。

 以下、私は、前述の論文に記述されている実験結果を説明するために、二つの相互排他的なシナリオの概要を述べる。第一シナリオ(I)では、実験結果は、偽ものであって、測定の欠陥 および(あるいは)環境の妨害(自然および人工の電磁波、宇宙線、あるいはトムソン/ゼーベック効果、等々)の結果である。

 第二シナリオ(II)では、実験結果は、偽りのないものとする。この場合、わたしは、それを説明するのに更なる理論的固体モデルについて言及している。

 (訳註:第二シナリオが、この著者の最も言いたい重要な点と見受けられるのであるが、長いので以下全て(第一シナリオも含めて)、割愛する。興味があれば、原著[1]の全文を読まれたい。)



文献

[1]ジェルマーニョ・ダブラーモ:“真空管中の悪魔”(エントロピー・ジャーナル)







11. フリーエネルギーと熱力学第二法則・マクスウェルの悪魔





  

11.1 熱力学第二法則



 熱力学第二法則には、二つの表現がある。

 これら二つの原理は、結局、同じことを意味していて、熱力学第二法則とされる。この法則は、物理学において、決して破れることのないもっとも根本的な自然法則の一つであると認識されている。

 トムソンの原理で否定された過程、すなわち、きまった温度にあるような熱源から熱を取り出して仕事に変えるようなサイクルをするものを第2種の永久機関と呼ぶ。オストワルド(Ostwald)は、熱力学第二法則として、第2種の永久機関は存在しない、という言い方をした。

  

11.2 マクスウェルの悪魔とその実現




 マックスウェルの悪魔という概念は、ジェームズ・マックスウェル(1831-1879)により提案されたもので、クラウジウスの原理を破って温度差を作ろうとするものである。

 ここで、物質として気体を例にとって考える。各気体分子は、それぞれの速度で動き回っている。互いに衝突したり容器の壁にぶつかったりしている。温度が高くなると平均速度が大きくなり温度が低くなると遅くなる。つまり、温度が高いことは、物質を構成する粒子が不規則に激しく動いている状態であり、温度が低いと言うことは粒子の動きが鈍い状態である。

 Fig.1は、気体分子の入った二つの容器で、互いに接触している。赤色で示す分子は速度が速く、青色で示す分子は速度が遅いとする。接触壁の中心位置に窓が開いているが、ここには開閉自在のシャッターが設けてある。充分な時間、窓のシャッターを開けたままにしておくと、左右の容器の温度が同じになる(Fig.1(a))。これが熱平行状態である。

Fig.1 マックスウェルの悪魔を説明するための図


 マックスウェルは容器の左右を仕切るシャッターを開閉する一匹の悪魔を考えたのである。この悪魔は右の部屋から遅い気体分子がくるとシャッターを素早く開閉して左の部屋に通し、左の部屋から速い気体分子がくるとまたシャッターを素早く開閉し右の部屋に通すとした。

 これを繰り返せば、Fig1(b)に示すように、容器の右には速い気体分子、左には遅い気体分子が集まることになる。つまり左右に温度差が出来ることになる。この場合、気体分子は何にも触れずに窓を通過するのでエネルギーはもらはない。

 つまり、マックスウェルの悪魔がいると容器の中の気体分子はエネルギーをもらわないで、しかも容器の左右に温度差が出来る。これはクラウジウスの原理を破るように見える。そのため、このマックスウェルの悪魔は1867年に提案されて以来大論争を引き起こした。

 ここで、マックスウェルの悪魔が、行っていることを段階を追って書くと、
  1. 気体粒子の速度を観測する。
  2. 観測して得た情報を記憶する。
  3. シャッターを操作して気体分子を通過させる。
  4. 先に得た記憶を消去して次の粒子の到来に備える。
ということになる。1961年になって、上記4の過程でエネルギーが使われていることが分かった。ランダウアーが、情報の消去のステップにエネルギーがいることを解明したのである。すなわちマックスウェルの悪魔はエネルギーを使用していたということになる。最近、日本人研究者により、取得と消去をあわせた情報のやりとりに必要なエネルギーには一定の制限があることが解明されている。

 最近は、マックスウェルの悪魔を実際に作り出そうという研究がなされているが、この研究は、現在の理解では「エネルギーを使って情報を得、気体分子に直接働きかけることなくその動きを制御すること」である。これは、熱力学に反することではない。



  

11.3 熱力学第二法則の破れ(コンデプディ & プリゴジン)



 熱力学第二法則の破れについては、第10章に書いたが、その一部をここに再掲する。これは、ノーダンの実験に対するTom Beardenのコメントレターの抜粋である。

 
ノーダン様

 …強烈な勾配は、また、‘熱力学第二法則を破る’という先導的熱力学により既に認められた領域でもあります。例えば、コンデプディおよびプリゴジン(Dilip Kondepudi and Ilya Prigogine)の著書 "Modern Thermodynamics: From Heat Engines to Dissipative Structures", (Wiley, New York, 1998, reprinted with corrections 1999)を見られたい。

 既に知られている‘熱力学第二法則を破る’という領域は、その459頁にあります。その一つは強烈な勾配であり、そのほかのものは材料のメモリー、等々です。Kondepudi および Prigogineが、そのような強烈な勾配について、“理論的にも実験的にも、あまり良くは知られていない”と述べています。…

  よろしく。
  Tom Bearden



 (私は、上記の著書を入手してないので、詳しいことは知らない)

  

11.4 フリーエナジー(FE)分野のマクスウェルの悪魔



 上記、正統派科学におけるマクスウェルの悪魔は、上述のようにエネルギーを使う。しかし、FE分野の異端科学におけるマクスウェルの悪魔は、エネルギーを使用しないと考えられている。例えば、

 (1)ダイオードアレイによるZPE捕獲

 Metal-Insulator-Metal (MIM) ダイオード、あるいは、 Metal-Oxide-Metal (MOM)ダイオード、あるいは トンネルダイオードは、高速動作し、その動作メカニズムは量子トンネル効果あるいは熱刺激により支配されている。1970年にブリンクマン等が初めて、ゼロバイアスのMIMトンネルダイオードが十分大きく応答することを実証した。

 上記7-9節に述べたように、ブラウンは、特殊ダイオードの集積体(例えば100,000,000,000個のダイオード)を用いゼロポイント振動から電力を取り出すことが出来るとしている。

 そして、この場合、ダイオードがマックスウェルの悪魔であり、ゼロバイアスであるので、エネルギーを消費しない、と主張している。  ブラウンの回路は模式的に書くとFig.2のようになるであろうか。エネルギー源はZPEであり、負荷抵抗RLに電流が流れダイオードアレイは冷却されると主張している。



Fig.2 ブラウンの回路の模式図。ZPEはとりあえず二本の矢で示してみた。




 (2) フー & フーおよびパーミノフ & ニクロフのZPE捕獲実験

 10節に述べたように、フー & フーおよびパーミノフ & ニクロフは、真空管に静磁場をかけてZPEを捕獲したと報告している。この場合、静磁場がマックスウェルの悪魔であり、エネルギーを消費しない、と主張している。

 上述のように、ブラウンの場合も、フー & フーおよびパーミノフ & ニクロフの場合も、マックスウェルの悪魔はエネルギーを消費しない、と主張しているので、熱力学第二法則が破れていることになる。

 上記(1)および(2)の主張には、ともに、理論的 and/or 実験的検証が必要であることは、言うまでもない。

  

11.5 ヒノ教授の奇妙なデバイス



 VIII章4節のヒノ教授の論文を見られたい。 これは、簡単にいえば、

が電力を発生することを発見したことである(Fig.3)。

Fig.3 ヒノ教授のMIM構造デバイス。Rは高抵抗、Mは
電圧計(Keithley 614, 内部抵抗5X1013Ω)である。


 前述のブラウンのパテントでもMIM構造が使われている。ブラウンのMIMは、Metal-Insulator-Metal (MIM) ダイオード、あるいは、 Metal-Oxide-Metal (MOM)ダイオード、あるいは トンネルダイオードであると思われる。これは高速動作し、その動作メカニズムは量子トンネル効果あるいは熱刺激により支配されている。1970年にブリンクマン等が初めて、ゼロバイアスのMIMトンネルダイオードが十分大きく応答することを実証した。

 Fig.3において、負荷RにDC電流が流れ続ける(数年間観測し続けた)。そのときMIMの温度が低下することが観測されている。この現象は熱力学第二法則が破れているのではないだろうか。熱力学第二法則の点だけでなく、マックスウェルの悪魔の点やZPEの点から、理論的にも実験的にも、もっと深く検討してみる必要があると思われる。

 なお、ヒノ教授のこの論文は、日本語で書かれているので、外国では知られていないかもしれない。しかし、私は、世界的に重要な論文だと考えている。れっきとした査読付き学術論文である。ヒノ教授は追試可能なところまで詳細に書き込んでいるので、読者は、ぜひ追試してみて欲しい。出来れば発展させて欲しいと思う。



  

11.6 冷える装置の熱力学第二法則の破れの可能性



 第I章でヒートポンプによる冷却を説明したが、これは、エネルギーを使用して熱エネルギーをくみ上げるもので、熱力学第二法則は破れていない。

 上記クラウジウスの原理によれば、それ以外に何の変化も残さずに低温物体から高温物体に熱を移すことは不可能である。例えば、ヤカンに水を入れてガスコンロにかける。ガスコンロには火をつけないでおく。この状況でガスコンロの熱をヤカンに移して沸騰させることは不可能である。

 火をつけてないガスコンロの熱が取られて、コンロの温度が、どんどん冷えていき、ヤカンの水が熱くなるという状態が、もし現われたなら、それは、熱力学第二法則の破綻現象である。

 ヒノ教授のデバイス以外の冷える装置の例:

  1. サールの発電・浮揚装置。

  2. R. ソロミャニの冷える共振クリスタル電池(VIII章)

  3. カウスキー・フロストの冷える干渉波水晶共振器の浮揚 (X章)

  4. フロイド・スウィートの冷える装置VTA―重量変化・発電・自立運転(X章)

  5. 冷電気現象(IIIa章):グレイの装置

  6. デイブ・ロートンの半導体回路,etc.


 以上の例では、熱力学第二法則が破れているかもしれない。

 読者が、何らかのFEデバイスと思しきものを作ったら温度を測定してみると良いだろう。その場合、室温より低い温度にならなくてもよいのであって、例えば、数10℃くらいは上昇するはずなのに数℃しか上昇しないという場合もあり得るので、注意されたい。








12. カシミール効果の研究動向




 本解説は、MRRT氏(ある大学の研究者)から頂いた玉稿である。

12.1 カシミール効果に関する研究の発展



「3.2 カシミール効果」にて述べられているように、カシミール力は1948年にH. B. G. Casimirによって予測され[1]、1997年にLamoreauxによって実験的に確認された[2]。

Casimirは1948年の論文中で、完全導体の平行平板間に働く相互作用力を求めた。真空中には何もないわけではなく、電磁場が存在しており、その電磁場は無数の調和振動子の集まりとして扱うことができる。

さらに量子力学の不確定性原理から、その一つ一つの調和振動子は基底状態においてエネルギーがゼロではなく、ZPE(Zero point energy)というエネルギーを持っていることがわかっている。

真空中の無数の調和振動子一つ一つがこのZEPを持っているため、真空のエネルギーはその総和となり、無限に発散する。

しかし真空の場合、このエネルギーはどこでも同じであるため、そのままでは何も影響を及ぼさない。なんらかの効果を生じさせる、あるいはエネルギー源として利用するためにはエネルギー密度に差を作る必要がある。

ではどのような方法であればこの無限に発散する真空のエネルギーを活用できるだろうか?

ここで登場するのがCasimirのシンプルな提案、すなわち真空中に完全導体の平行平板を置くというアイデアである




Fig.1 Casimir effect
平行平板によってゼロポイントエネルギー密度に差が生じ引力が働く。


完全導体と真空の境界面では、電磁場の境界条件が存在している。例えば、電場の成分は完全導体表面に対して必ず垂直となる。

このため、完全導体に挟まれた領域では存在できる電磁場のモード(周波数)が制限され、平行平板の外側の領域と比べて電磁場のモードが少なくなる。

このため平行平板間の領域のZPE密度は、自由空間よりも低くなる。このエネルギー密度の差によって平行平板が互いに引き合う方へと圧力を受ける。

この真空のZPEによって圧力が生じる現象をカシミール効果、その時の力はカシミール力と呼ばれている。 このようにして、Casimirは古典的な電磁気の計算からカシミール力の導出を行った。ZEPの導入以外はすべて古典論の枠組みの中で納まっている。

この1948年の論文と同じ1948年に、CasimirはD. Polderと共著で"The Influence of Retardation on the London-van der Waals Forces"と題した論文を発表している[3]。

この論文は広く知られている相互作用力のvan der Waals Forceに遅延効果を導入した場合、どのような相互作用力の距離依存性となるかを理論的に計算したものであった。

加算性の問題

例えば原子A、Bを考えると、A-B間の相互作用力は簡単に求めることができる。 原子Aは量子的ゆらぎによって電気的に分極するため、双極子と見なすことができる。この双極子Aによって原子Bが電気的に誘起され同じく双極子となる。 このため、A-B間の相互作用力は双極子-双極子間の静電気力として求めることができる。前記の遅延効果はこの双極子の回転として表すことができる。 しかし原子Cを追加した場合、単純にA-B間の場合を加算したものとはならない。双極子AはCに影響しそれがさらに双極子Bへと伝播される。無数の原子が存在する分子等の巨視的な場合は、さらに複雑化する。 このように、巨視的な系の相互作用力を考える場合は、2原子間の相互作用力の単純な可算では考えられない。
遅延効果

”2個の原子がかなり遠くに離れていると、第一の原子の電場が第二の原子の原子に到達して戻ってくるまでの時間は双極子自身のゆらぎ時間と同程度になりうる。 このような場合、第二の原子から電場が第一の原子に戻ったときにはその双極子の方向は前と違っており、引力相互作用に都合の良い方向に向いてない”(参考文献[4]より引用)
このため、原子間距離が増大すると相互作用力の大きさは理想的な場合よりも速く減少する。
遅延効果は物体間距離が数ナノメートルスケール程度以上離れた場合において顕著になる。例えば半径1 cmの二枚の雲母曲面に働く相互作用力の遅延効果は5 nm以上で顕著になる[5]。

この影響をvan der Waals Forceに対して計算した結果、前述のZPEから求めた相互作用力の計算結果と一致することがわかった。これはカシミール力とvan der Waals Forceが本質的に同じものであることを示している。

物体間の距離が数 nm程度の微視的な領域では相互作用力はvan der Waals Force、それ以上の巨視的な領域ではカシミール力としての距離依存性を示す。

また加算性の問題を考えた場合、巨視的な物体間に働く相互作用力は2原子間に働く場合の単純な加算とはならない[4]。

このため2つの双極子間の静電気力として計算した場合のvan der Waals Forceを単純に加算するだけでは、巨視的な物体間に働く相互作用力を求めることはできない。

Lifshitzはこのような加算性の問題を避けるため、物体を連続媒質と見なしその誘電率などのバルクの性質を用いて相互作用力を求める手法を提案した。

同様に、Casimirは原子間の相互作用から加算するのではなく、完全導体の平行平板という巨視的な系で計算を行った。

よってカシミール力に関して加算性の問題は避けられている。つまりvan der Waals Forceは非遅延的で加算的な場合のカシミール力である。

以上から、原子間の相互作用など微視的な物体間・領域に働く場合の相互作用力はvan der Waals Force、巨視的な物体間・領域の場合はカシミール力として考えることができる。

このようなCasimirの理論を皮切りにカシミール力とZPEの研究が展開していくこととなった。



[1] H. B. G. Casimir, Proc. K. Ned. Akad. Wet. 51, 793 (1948).
[2] S. K. Lamoreaux, Phys. Rev. Lett. 78, 5 (1997).
[3] H. B. G. Casimir and D. Polder, Phys. Rev. 73, 360 (1948).
[4] J. N. Israelachvili(著). "分子間力と表面力." 第 2 版, 近藤保(訳), 大島広行(訳), 朝倉書店, 東京 (1996).


12.2 カシミール力の制御と表面粗さ依存性



「12.1 カシミール効果に関する研究の発展」で述べたように1948年当初、Casimirは完全導体間に働く場合のカシミール力を予測していた。これは理想的な金属-金属間の場合の理論計算結果であった。

このため、Lamoreauxを含め多くの研究者によって金属-金属間に働くカシミール力が測定されてきた。

しかし2007年、Chenらによってシリコン等の半導体に光照射を行うことでカシミール力の大きさを変化できることが報告されたため[1]、金属-半導体間に働くカシミール力の研究が近年盛んに行われている[2-4]。

Chenらは試料のシリコン基板へレーザー光を照射し、レーザー光の強度によってカシミール力の大きさを制御できることを示した。

これはシリコン等の半導体へレーザー光を照射すると半導体内部のキャリアが励起され、半導体の導電率が変わりカシミール力の大きさが変化するためと考えられている。

Csimirの計算では完全導体、すなわち導電率が無限大の理想金属が仮定されており、実際の金属では力のその大きさは小さくなる。

このため、物体の導電率が大きくなり理想的な金属へ近づけばカシミール力の大きさは増大する。実際にChenらの実験でも、レーザー光の強度を増大するとカシミール力も増大することが確認された。

また物質によっても伝導率が異なるため、半導体だけでなく様々な物質を用いての測定も行われている。




Fig.1 カシミール測定で用いられる測定系
多くのカシミール力の測定では、原子力顕微鏡の構成を利用し、探針と試料間に働くカシミール力の変化をカンチレバーのたわみから求めている。 カンチレバーの先端には探針(カシミール力の測定では球形の探針が多い)が取り付けられており、探針と試料間に力がかかるとフックの法則に従ってカンチレバーがたわむ。 カンチレバーがたわむと分割フォトダイオードへ入射する光の角度が変化し、フォトダイオードの電圧差として測定される。 このようにしてカンチレバーのたわみはレーザー光の反射から求められている。


     
研究グループ 物質距離(nm)測定時の真空度(Pa)
Lamoreaux AuとAu 600から6000 1.3×10-2
Mohideen and Roy AlとAl 100から900 6.7
Chen et al. SiとAu 60から600 2.7×10-5
Chan et al. SiとAu 150から500 1.3×10-4
Decca et al. AuとCu 200から2000 1.3×10-2
Laurent et al. AuとAu, Si-Au 100から400 4.0
Banishev et al. SiO2とAu 220から500 1.3×10-7

Table1 複数の研究グループによるカシミール力の測定条件
異なる物質、距離、真空度で測定が行われている。
ナノメートルスケールの近距離でのカシミール力の測定では高真空
度下での物体の表面処理が求められる。


このようなカシミール力の測定において問題となるのが他の力の影響や物質の表面粗さの影響である。

カシミール力はナノメートルスケールにおいてもピコニュートンからナノニュートン程度の大きさであるため、測定時には静電気力やcapillary forceやmeniscus force等の影響を小さくする必要がある。

Capillary forceやmeniscus forceは物体表面の水分子によって生じ、大気中ではこの水分子の影響は無視できない。そのためカシミール力の測定は真空環境下で行う必要がある。

また、物体間には接触電位差(CPD: Contact potential difference)が存在しているため、このCPDに起因して静電気力が生じる。よって測定時には物体間にCPD相当の電圧を印加することで静電気力をキャンセルする必要がある。

物体表面に不純物が多い場合は局所的な電荷分布によって静電気力が複雑な距離依存性を示し、キャンセルが困難となるため真空中での表面処理が求められる。

さらにカシミール力は物体の表面粗さに依存しており、表面粗さの大きな物体間の場合のカシミール力は理論予測から大きく逸脱しその解析は困難となる[5-6]。

このような理由からナノメートルスケールの近距離でのカシミール力測定では、真空中での表面処理によって作製した平坦で清浄な試料が求められている。

カシミール力の制御等への応用が期待されている反面、測定環境の構築の難しさにより理想的な条件下での測定結果が不足しているという現状であり、理論の検証を行う上でもさらなる理想的な条件下での測定が求められる。

[1] F. Chen et al., Phys. Rev. B 76, 035338 (2007).
[2] H. B. Chan et al., Phys. Rev. Lett. 101, 030401 (2008).
[3] J. Laurent, H. Sellier, A. Mosset, S. Huant, and J. Chevrier, Phys. Rev. B 85, 035426 (2012).
[4] N. Yoshida et al., Jpn. J. Appl. Phys. 55, 08NB20 (2016).
[5] M. Bordag, U. Mohideen, and V. M. Mostepanenko, Phys. Rep. 353, 1 (2001).
[6] P. J. van Zwol, G. Palasantzas, and J. Th. M. De Hosson, Phys. Rev. B 77, 075412(2008).


12.3 カシミール斥力による量子浮遊



カシミール力の応用例として、カシミール力を斥力化させて微小物体を浮遊させる「量子浮遊」への応用に注目が集まっている。

前述のChenらのカシミール力の制御は引力としてのカシミール力の大きさをを変化させるものだった。しかしながら、カシミール力を引力から斥力へと変化させることには成功していない。

そんな中、2009年にMundayらが斥力としてのカシミール力の測定に成功した[1]。 カシミール力は物体と媒質の誘電率に依存している。2物体の誘電率をε1,ε2、媒質の誘電率をε3とすると、斥力となる条件はそれぞれの誘電率の大小がε2<ε3<ε1となることである[1]。

このことに注目し、Mundayらはブロモベンゼン溶液中で測定を行うことでカシミール斥力の測定を行った。Mundayらもカンチレバーのたわみからフックの法則を用いて力を算出している。

彼らはブロモベンゼン溶液中のAu-Si及びAu-Au間に働くカシミール力の距離依存性を測定し、二つの測定結果を比較することでAu-Si間の場合とAu-Au間の場合は力の向きが反対となることを確認した。

以上の測定結果から、ブロモベンゼン溶液中のAu-Si間に働くカシミール力は斥力となっていることが明らかになった。しかしながら、Mundayらの結果は溶液中であり真空中及び大気中でのカシミール斥力は未だ確認されていない。




Fig.1 カシミール力が斥力となる条件


真空中ではε3=0であるため、斥力となる条件(ε2<ε3<ε1)を満たすためには誘電率(屈折率)が負の物質を用いる必要がある。

このような負の屈折率を示す物質はメタマテリアルと呼ばれ、通常自然界には存在しておらず、人工的に微細加工技術を用いて作製される。

このメタマテリアルを用いてカシミール力を斥力として利用するアイデアがRosaによって提案され、現在も研究が行われている[2]。


Fig.2 人工的な周期的微細構造を利用したメタマテリアル、
wikipediaコモンズより[3]
自然界には屈折率が負となる物質は存在しないため、
人工的に作り出す必要がある。自然界の物質に対して
メタという意味を込めてメタマテリアルと呼ばれる。


しかし2017年現在までにメタマテリアルを用いて斥力のカシミール力が測定されたという報告はなされていない。

これは人工的な微細周期構造によって構成されたメタマテリアルでは斥力が弱まるためではないかと考えられている[4]。このため、別の手法として磁性体薄膜を用いてカシミール力を斥力化させる研究が行われている[5]。

カシミール力は電磁場のモードから計算されるが、電磁場のモード数は平行平板の反射率に依存している[6]。

電磁場の二つの偏光方向、TE(Transverse electric wave)波とTM(Transverse magnetic wave)波それぞれの反射率をRte, Rtmと置くと、カシミール力はこの2つの成分による力の合力として表すことができる。

そしてイットリウム鉄ガーネット(YIG: yttrium iron garnet(Y3Fe5O12))のような誘電率が小さく透磁率の大きな磁性体を用いた場合、この合力の内のRte成分の力が斥力となる[7]。

さらにRteとRtmは物質の膜厚に依存しており、膜厚を薄くすることでRtmはRteよりも大きく減少する。 このため膜厚の小さな磁性体薄膜を用いることでRtm成分がRte成分よりも大きく減少し、全体としてカシミール力を斥力にすることができることがInuiによって予測された[5]。

計算はYIGとBSCCO間のカシミール力と完全導体間のカシミール力の比の距離依存性を求めたものとなっており、YIGの膜厚による力の符合の変化を130Kの条件下で求めている。

完全導体間のカシミール力は必ず引力となるため、力の比の符合が負の領域でYIGとBSCCO間のカシミール力が斥力となることを意味している。

計算の結果、YIGの膜厚が薄くなると、斥力となる領域がより近距離側に移ることが明らかになった。 この結果から、カシミール斥力を用いて磁性体薄膜を金属板の上に量子浮遊させる可能性も示された[8]。

以上のようにカシミール力を斥力として利用する研究は2017年現在も発展途上であり、理想的な測定条件の確立と理論の検証が進むことで量子浮遊が実現される日が待ち望まれる。



Fig.3 カシミール斥力による量子浮遊の概念図
磁性体薄膜を用いることでカシミール力の斥力成分が引力成分より
も大きくなり、全体として斥力にすることができる。このカシミール斥力
を利用し、微小物体を浮遊させる量子浮遊が期待されている。




[1] J. N. Munday et al., Nature 457, 170 (2009).
[2] F. S. S. Rosa, D. A. R. Dalvit, and P. W. Milonni, Phys. Rev. Lett. 100, 183602 (2008).
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/File:Split-ring_resonator_array_10K_sq_nm.jpg (パブリックドメイン)
[4] KAKEN: 科学研究費助成事業データベース、国立情報学研究所 https://kaken.nii.ac.jp/
[5] N. Inui, Phys. Rev. A 84, 052505 (2011).
[6] D. Kupiszewska and J. Mostowski, Phys. Rev. A 41, 4636 (1990).
[7] B. Geyer et al., Phys. Rev. B 81, 104101 (2010).
[8] N. Inui, J. Appl. Phys. 111, 074304 (2012).


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